百年先まで地域の宝に 土井さんが絵画奉納

和歌山市の洋画家、土井久幸さん(45)が同市吉礼の都麻津姫神社(中谷承平宮司)に空から見た同神社を描いたクレパス画を奉納した。土井さんは「この絵が、後世の人にとって令和3年の神社の姿に思いを巡らすきっかけになればうれしい」と笑顔で話している。

土井さんは、フランス取材などを基に、見る人との共感を大切にする独自の画法「情景画」を追求。コロナ禍を機に2020年から神社の取材も始め、神道をモチーフにした作品を手掛ける。

同神社は、都麻津姫命(つまつひめのみこと)を主祭神とする吉礼地域の氏神。地元では「宮さん」の愛称で親しまれている。1940年に奉納された、当時の神社の姿を描いた絵画が残されており、社務所や本殿へと続く建物が老朽化で取り壊しを検討する中、同様に今の姿を記録し後世に残したいと、中谷宮司(44)が土井さんに依頼。土井さんがことし9月に制作を開始した。

母親の実家が同神社の近くにあったため、子どもの頃は境内でよく遊んでいたという土井さんは、絵で残すということを意識し「100年先の人が見ても分かりやすいように」と、ドローンで撮影した写真などを基に境内全体をクレパスで写実的に表現。1940年の作品と視点を同じくし、神社の桜や池の他、周辺の建物なども描いた。土井さんの知人で海南市の書家、杉下聖巖(せいがん)さん(33)が「吉礼都麻津姫神社図」などと墨で書き入れ、縦約55㌢、横約120㌢の神社境内の鳥瞰(ちょうかん)図が完成した。

中谷宮司は「吉礼地域の拠点である神社の姿を後世に伝えたい。次世代の子どもたちが神社を誇りに思い、宝物として次につなげていってくれれば」と願いを込めた。

奉納された絵画は1月1日から3日まで、参拝者に公開するという。

 

奉納した絵画と土井さん㊧、中谷宮司(土井さん提供)