IR住民投票案を審議 臨時市議会で議論紛糾か

和歌山市の和歌山マリーナシティにカジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する計画の賛否を問う住民投票条例案を審議する臨時市議会が24日、開会した。尾花正啓市長は「実施する意義は見いだし難い」と制定に反対する意見を述べた一方、市議会各会派は賛否が分かれ、条例案の修正を目指す動きもあり、議論は紛糾しそうだ。条例案は25日の総務委員会で審議、採決の後、27日の本会議で採決される。

条例案の制定は、IR誘致について住民の意見を直接聞く機会をつくろうと、市民団体「カジノ誘致の是非を問う和歌山市民の会」が直接請求。必要な有権者の50分の1(6162人)以上の3倍超となる2万39人分の署名を提出し、市は今月7日に受理していた。

24日の本会議で尾花市長は、市民の会が作成した条例案への意見を述べ、「直接請求がなされたことは、IR誘致の賛否を問わず、市民の関心の表れと感じている」とした一方で、IR誘致の同意について、市はIR整備法が義務付けていない市議会の議決を必要とする手続きを定めた上、これまでも議論してきたこと、一般的に条例に基づく住民投票は法律が定めた首長や議会の権限を拘束することができないとされていること、住民投票の実施には多額の費用を要することを理由に、反対する見解を示した。

市長の意見に対する質疑では、戸田正人議員(政和クラブ)は、前回の市長選、市議選当時、尾花市長はカジノについて「外国人専用が最善」と現在とは異なる見解だったことなどから、「IRに関してのみ考えれば、代表民主制の信頼度に一部齟齬(そご)が生じているのではと考えられる」と指摘。その上で条例案に市議会の権限を抑制する規定があること、住民投票の成立要件となる投票率の規定がないことなどを問題視した。

森下佐知子議員(共産党市会議員団)、山本忠相議員(民主クラブ)も質疑を行い、直接請求の受け止めや民意をどう確認するかなどをただしたが、尾花市長は意見と同様の説明を繰り返した。

条例案の可決には議長を除く19人の賛成が必要。6会派のうち自民党市議団(8人)、公明党議員団(8人)は反対とみられ、共産党市会議員団(6人)は賛成、政和クラブ(6人)は修正案の提出を模索。民主クラブ(5人)、和歌山興志クラブ・日本維新の会(5人)は会派内に賛否がある。

25日の総務委員会では、市民の会の請求代表人6人が意見陳述し、審議が行われる。採決の行方が注目される。

傍聴に訪れた市民の会共同代表で請求代表人の一人、島久美子さんは「市民の思いをくみ取る誠意は市長から感じられなかった。すでに取り組みが進んでいるから、議員や市長が進めているから(住民投票は)必要ないという考え方には違和感がある」とし、「市民の思いを市議はどう受け止めるのか、今後の審議を期待しながら見守りたい」と話した。

臨時市議会で条例案に反対の意見を述べる尾花市長(手前)

臨時市議会で条例案に反対の意見を述べる尾花市長(手前)