血栓防ぎ脳梗塞回避 日赤が左心耳閉鎖術導入
日赤和歌山医療センター(和歌山市小松原通、山下幸孝院長)は、不整脈による血栓(血の塊)を予防し、脳梗塞のリスクを低下させるカテーテルでの新たな治療法「左心耳(さしんじ)閉鎖術」を県内で初めて導入した。心臓内に細い管を入れ、ステント(内側から広げるための器具)で不整脈により血栓ができやすい場所をふさぐ予防法。非弁膜症性心房細動があって脳梗塞のリスクが高く、血液をさらさらにする抗凝固療薬を服用しなければならない人のうち、消化管などに出血があるなど出血リスクが高い患者が適用者となる。
不整脈とは、健康診断や診察時の心電図検査で脈拍に異常が見られるなど、心拍に異常がある状態のこと。心臓内に四つある部屋のうち、心房が小刻みに震えて十分に機能しなくなる「心房細動」も不整脈の一つであり、頻繁に起こると心臓内部で比較的大きな血栓ができやすく、血流にのって脳に届くと、脳血管を詰まらせる脳梗塞になるリスクが高まる。
脳梗塞になってしまうと広範囲で障害が生じてしまうため、死亡リスクも高く、救命できたとしても重い後遺症から介護生活を余儀なくされる場合が多い。
同センターでは、心房細動が起こる不整脈の根治療法として、年間300例以上「カテーテルアブレーション治療」を行っているが、不整脈による血栓を予防する治療法が望まれていた。
2019年、新たに日本に導入された左心耳閉鎖術は、心臓内部で血栓を生じやすい左心耳という小さなくぼみに膜のついた最新式の器具「WATCHMANFLX(ウォッチマンフレックス)」を太ももの付け根からカテーテルで挿入し、くぼみをふさぐことで血栓をつくらせない治療法。
同治療を実施するには、日本循環器学会の認定が必要で、ことし1月1日時点で全国の認定施設数は129と実施施設はまだまだ少ない。同センターは1月、同学会の実施施設としての基準を満たした県内初の施設に認定されたため、一例目を実施。これまでに3例実施している。
健康保険の適用対象で、手術時間は約3時間。入院期間は4~5日程度で、経過が順調であれば退院後しばらくするとスポーツや就労など社会復帰もできる。
循環器内科部の花澤康司副部長(46)は「出血リスクの高い心房細動の患者さんに、脳梗塞のリスクを低下させることでより安全に毎日を過ごしてもらえるのでは」と期待し、「他府県でできることは県内でもできるように医療サービスを改善していくことが大切。今後も新たな治療法の導入を積極的に続けていく」と意気込んでいる。