多種多様世界の版画 和歌山近代美術館

世界の近代版画を集めた展覧会「モダン・プリンツ コレクションに見る世界の版画」が6月26日まで、和歌山市吹上の県立近代美術館で開かれている。
版画は、図や文字などのイメージを複製するための技術を用いた表現。近代以降は、個性を重視した「美術作品」としての展開を見せる。

今展では、19世紀末から現代にかけて制作された近代版画と資料計約240点を展示。同館がコレクションする欧米の画家や版画家の作品を中心に時代ごとに流れを紹介する。

19世紀末の作品は、柔らかく、手で描いたような質感が表現できるリトグラフと線描がはっきりとした銅版画の作品が多い。黒一色のモノクロームで刷られ、見る側の創造力をかき立てる。

一方同時期には、浮世絵など日本の多色刷り木版画に影響を受けたジャポニズム作品がヨーロッパで流行。日本で木版画技術を学んだエミール・オルリクの作品は雑誌「白樺」に掲載されるなど相互に影響し合った。

またフィンセント・ファン・ゴッホやパブロ・ピカソといった近代美術史に名を残す画家たちが、表現の一つとして手掛けた版画作品も並ぶ。
20世紀になると、新たな表現として開拓された鮮やかな原色が印象的なアンリ・マティスの切り絵のステンシル作品、オリジナルと複製の問題を内包する版画に一石を投じたアンディ・ウォーホルの「キャンベル・スープ」シリーズなど、技術の発達と解釈の多様化により、さまざまな展開を見せる近代版画の広がりを感じることができる。

展示を担当した青木加苗学芸員(44)は「版画は身近な美術作品。作品から版画だからこその横の広がりを感じてもらえれば」と話している。

30日、5月15日、29日は午後2時から、同館学芸員による展示解説、5月14日、15日は午前11時から小学生対象の作品鑑賞会「こども美術館部」が開かれる。子ども美術館部は、定員6人、同館ウェブサイトで事前参加申し込みが必要。

一般520円、大学生300円。高校生以下、65歳以上は無料。

午前9時半から午後5時(入場は4時半)まで。月曜休館。

問い合わせは同館(℡073・436・8690)。

さまざまな技法で刷られた近代版画が並ぶ

さまざまな技法で刷られた近代版画が並ぶ