優先順位を決めて議論を 衆議院選挙制度見直しの論点
衆議院選挙制度の見直しについて、野党から要望の出ていた与野党協議会設置が、細田衆議院議長が10増10減案に異論を唱えたことに野党が反発して進みません。
そもそも与野党による「選挙制度協議会」は、現在の選挙制度導入以来、四半世紀が経過し、さまざまな課題が指摘される状況を踏まえ、選挙制度のあるべき姿について抜本的な議論を行おうとするものです。
「議長が発言する」是非は議論するにしても、議長が協議会のメンバーや座長を務めるわけではないので設置とは別問題だと思います。さらに、細田議長が持論の3増3減を提案されたのは、国勢調査速報値発表の直後であり、議長就任前のことでもあります。
そして、この提案が正面から取り上げられないことは、もう一つ別の問題をはらんでいます。平成28年の衆議院選挙制度改革関連法では、不断の見直し条項が附則で規定されました。この附則は、審議時に与野党を問わず活用に肯定的に言及しており、法の趣旨に鑑みれば細田議長の提案は真摯(しんし)に議論すべき対象です。
2月中旬のNHK世論調査でも10増10減について、行うべきが27%、見直すべきが48%、わからない等が25%との結果でした。国民も多くの方が見直しを求めている現状も踏まえ、ぜひとも建設的な議論を進めたいものです。
さて、選挙制度の見直しの論点は大きく次の3点に集約でき、優先順位を決めて議論していく必要があります。
①憲法改正を視野にいれた抜本的な課題
まず一票の格差問題について、憲法14条の平等原則との関係で人口を基準として議論されますが、平成30年の最高裁判決では地勢など諸要素もまた考慮すべき事項として言及されました。しかし、現状ではその規定がないため、具体的な議論が必要です。
また、衆参の役割のあり方についてや参議院での合区問題、都市部への過度な人口集中に伴う選挙制度のあり方なども憲法改正が関わる課題です。
②公選法の改正で対応可能な問題点
1つの選挙区から複数の当選者が出ることなど比例復活のあり方をはじめ、小選挙区と比例区の議席配分のあり方など疑問の声があり、現行の小選挙区比例代表並立制への評価を含め、論点を整理してしっかり対応していくことが必要です。
また議員定数削減については、調査会答申では否定的であり最高裁判決でも求められていないだけに、民意の的確な反映の観点から議論が必要です。
③10増10減で議論すべき論点
再検討は国民の声であるとともに、さまざまな論点があります。
まず、都道府県の定数配分を行うとき、基準が人口だと和歌山県が、有権者数だと沖縄県が10減の対象と結果が変わってきます。
また議員一人あたり人口は、減員となる議席の少ない6県で議席の多い東京を上回り、そのうち和歌山を含む4県では全国で最大となってしまいます。この逆転現象について国民の理解が得られるか、議論が必要です。
そして、定数配分は都道府県別で行いますが、一票の格差は鳥取2区と東京22区のように選挙区で比較され、この基準の違いから3増3減案が出てきます。
さらに、被災地の宮城と福島が10減の対象であることも議論が必要です。
これらのほかにも数多くの論点があります。紙数の都合で大まかな説明になりましたが、さまざまな課題を解決すべく、これからもしっかり取り組んでまいります。