木成り栽培の「紅甘夏」
前号では、グレープフルーツのような味わいを楽しめる「河内晩柑」を取り上げた。河内晩柑は樹上で実る期間が長い「木成り栽培」によるもの。冬の時期に収穫を終え、貯蔵することで酸味を落としてから出荷するのが一般的であるものの、樹上で完熟させ、貯蔵することなく出荷する栽培方法は、他の柑橘(かんきつ)でも採用されている。今週は今が旬の、木成り栽培された「紅甘夏(べにあまなつ)」を紹介したい。
紅甘夏は、甘夏の枝替わりの品種とされる。甘夏は以前このコーナーで取り上げたが、紅甘夏は甘夏と比べ、果皮や果肉が赤味を帯び、濃い甘さの中にまろやかな酸味があり、一粒に果汁が多く含まれていることが特徴。大きさは500㌘程度あり、ずっしりとした重さがある。
主な生産地は鹿児島県。鹿児島県阿久根市、出水市、長島町で栽培される紅甘夏を「出水の紅甘夏」というブランド名で販売される、いわば高級甘夏。鹿児島県の農水産物認証制度を取得するなど、通常の甘夏と同様に一大産地となっている。
筆者が手に入れた紅甘夏は田辺市で収穫されたもの。生産量が多くないため統計上の数値は確認できないが、通常の甘夏の生産量第4位(2018年農水省統計)から考えると、県内でも一定量の栽培が見込まれる。
食し方は、外皮が分厚いため、果物用ナイフなどで外皮に切り込みを入れ外皮を取り除き、手で割いていく。果肉がみずみずしいため、果肉にはナイフを入れないようにすることがポイント。
果肉に含まれる成分は甘夏と同様にビタミンCが豊富で、クエン酸が含まれ、疲労回復や風邪の予防に有効。甘夏とは一味違う紅甘夏。甘夏との食べ比べも面白い。店頭で見掛けたときはぜひ。
(次田尚弘/和歌山市)