災い払う「大般若経」 県立博物館で企画展
大乗仏典最大のボリュームを有し、和歌山県内各地の寺社に伝わっている「大般若波羅蜜多経(大般若経)」を紹介する特別展「きのくにの大般若経―わざわいをはらう経典―」が6月5日まで、和歌山市吹上の県立博物館で開かれている。
大般若経は飛鳥時代に日本に伝わり、疫病や自然災害などの災いを取り除く働きがある経典として、中央から地方へ広まった。全600巻、480万字以上に及び、県内では奈良時代から明治時代初めにかけて200例近い手書きの写本や印刷された版本が残されている。
今展では、新型コロナウイルス感染症退散の思いも込め、県指定文化財4件12点、市町村指定文化財9件36点を含む、34件137点を展示している。
紀美野町の小川八幡神社に残る大般若経は、奈良時代から室町時代にかけて書写された全600巻が現存している。奈良時代に手書きした経巻が120巻も含まれる貴重な資料。経巻の奥書から、信濃国(長野県)や武蔵国(埼玉県)、播磨国(兵庫県)など遠隔地からも、もたらされたことが分かる。作られた時代や場所が異なる巻も寄せ集められていることから、全巻そろえることがいかに至難かつ重要だったかがうかがえる。
平安時代の僧が7年ほどかけて1人で600巻全てを書写した「一筆経」や、村人がお金を出し合って購入した大般若経なども並ぶ。
展示を担当した竹中康彦副館長(59)は「科学的に物事を解決するのが難しかった時代に、経典の数の力で打開しようとした人々の気持ちと執念を感じてもらえれば」と話している。
22日午後1時半~3時には、関連の講座「小川八幡神社経の魅力と謎」が同館2階で開かれる。講師は竹中副館長。申し込みが必要で、定員先着20人。
午前9時半~午後5時(最終入館は4時半)。入館料一般520円、大学生310円。高校生以下、65歳以上は無料。月曜休館。
申し込みなどは同館(℡073・436・8670)。