産科医確保へ特別枠 県立医大で全国初
不足が深刻化している産科の医師を確保するため、和歌山県は17日、県立医科大学に2023年度入試から産科に限定した全国で初めての特別枠を設置し、学生を募集すると発表した。仁坂吉伸知事は「志ある人に応募してもらいたい」と期待を示し、産科医不足は全国的な問題との認識から、国に恒久的な対策を求める考えを示した。
県立医大は現在、募集定員100人のうち、卒業後9年間、県内の地域医療に従事することを条件とする県民医療枠を20人、地域医療枠を10人設置。新たな特別枠は、県民医療枠のうち5人を活用し、産科に限定した枠(学校推薦型選抜)を3人、産科・小児科・精神科のいずれかに従事する不足診療科枠(一般選抜)を2人設け、どちらも全国募集する。
特別枠の学生は、返還免除付きの修学資金の支給対象となる。金額は未定だが、へき地医療に従事する地域医療枠の学生には現在、自宅通学の場合に月額10万円、自宅外通学の場合に15万円を支給している。
分娩は24時間対応が求められ、他の診療科より医療訴訟が多い傾向もあることなどから、産科の医師不足は全国で課題となっている。
県内では近年、分娩を休止する病院が相次ぎ、本紙エリアでは2015年に国保野上厚生総合病院(紀美野町)、20年に公立那賀病院(紀の川市)が休止。有田市立病院と新宮市立医療センターでは、医師確保の懸命の取り組みによって一時休止していた分娩の再開にこぎつけたものの、深刻な医師不足は続いている。
県はすでに、現役の産科医に県内で働いてもらう取り組みや、県立医大に寄付講座を設け、産科医の育成や診療を支援する事業を進めており、今回の特別枠設置は「三段構え」(仁坂知事)の3段階目として、長期的に人材育成を図る取り組みとなっている。
仁坂知事は「国も恒久対策を考えていかないといけない。(和歌山のような)別枠を設け、プラスアルファで人材を養成することを、全国でやった方がいい。国に強く言っていきたい」と述べた。