柚子の変異種「小夏オレンジ」
前号では、樹上で木成り栽培されることで甘味が増し、八朔の概念を変える味わいが特徴の「紅八朔」を取り上げた。今週はこの時期に旬を迎える「小夏(こなつ)オレンジ」を紹介したい。
小夏オレンジは、長い歴史をもつ柑橘(かんきつ)。1820年、宮崎市にあった邸宅の庭で発見され、柚子が突然変異してできたものとされる。
品種登録されている正式な名称は「日向夏(ひゅうがなつ)」だが、高知県や和歌山県では「小夏」や「小夏オレンジ」、愛媛県や静岡県では「ニューサマーオレンジ」と呼ばれるなど、同じ品種でも栽培される地域によって名前が異なる。
大きさは温州みかんよりやや大きめ。外皮はレモンのような黄色をしている。むきづらいため、リンゴのようにナイフで外皮を取り除き、スライスして食べるのがおすすめ。果汁がたっぷりで、甘味と酸味のバランスが取れている。特徴は外皮と果肉の間にある白い内果皮(アルベド)に含まれる甘味。苦みがないので、全て取り除いてしまうのではなく半分程度残しておくとおいしく味わうことができる。好みで蜂蜜をかけて食べるのも良い。その他、ジュースやジュレに加工し、スイーツとして楽しむ方法もある。
2018年の農水省統計によると、生産量の第1位は宮崎県(54・3%)、第2位は高知県(41・3%)、第3位は静岡県(2・8%)で、福岡県、長崎県、愛媛県、熊本県と続く。和歌山県はランクインしていないが、筆者が産直市場で手にしたものは、和歌山市産であった。
県内産は珍しい小夏オレンジ。店頭で見掛けた際はぜひ手にして、さっぱりとした味わいを楽しんでみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)