仁坂知事5選不出馬 県議会答弁で表明
仁坂吉伸和歌山県知事(71)=4期目=は15日、任期満了(12月16日)に伴う次期知事選に立候補しない意向を表明した。同日の県議会本会議で、最大会派・自民党県議団の谷洋一県議の一般質問に答える形で述べた。仁坂県政は4期16年で幕を引くことになり、今後は後継候補を巡る動きが活発になるとみられる。
仁坂氏は和歌山市出身。桐蔭高、東大経済学部を卒業後、1974年に通商産業省(現経済産業省)に入省し、製造産業局次長、駐ブルネイ大使などを歴任。県発注工事を巡る官製談合・汚職事件で前知事が辞職、逮捕されたことに伴う2006年12月の出直し知事選で初当選し、連続4期目。20年12月から関西広域連合長を務めている。
仁坂県政は、最初の知事選から推薦を受けてきた自民、公明両党をはじめ多数派の県政与党に支えられ、安定した運営を続けてきた。4期目も、新型コロナウイルスの感染状況を低水準に抑え込む「和歌山モデル」などが評価された。
しかし、4期目の終盤を迎え、県議会最大会派の自民党との不協和音が聞こえることが増えた。
昨年12月県議会では、仁坂氏が県出身の元財務官僚を2人目の副知事に起用する人事案の提出を目指したが、自民党の反発で断念。ことしの2月県議会では、任期満了の年を迎えた知事に進退を問う慣例の一般質問を自民党が見送り、仁坂氏は次期知事選への態度を明らかにしてこなかった。
さらに、仁坂氏が推進してきたカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を巡り、昨年秋から本格化した県議会の議論の中で、事業者の資金調達計画が不透明などとする意見がIR推進派の自民党からも噴出。ことし4月の臨時県議会では、県当局に虚偽答弁の疑いがあるとして、調査権を持つ「百条委員会」の設置を一時検討する事態にまでなり、IRの区域整備計画案は否決。仁坂氏の肝いり政策は頓挫した。
15日の一般質問の答弁で仁坂氏は、不出馬を決めた理由として、多選は好ましくないとの声があり、自身も以前からそう発言してきたこと、県政界に次のリーダーを巡る対立があり、「県政の円滑な遂行に禍根を残しかねない」として自身が身を引く方が良いと考えたこと、夫人の体調が思わしくなく、一緒に過ごす時間を増やしたいことの3点を挙げた。
本会議終了後には報道陣の取材に応じ、自身の県政運営について「やりきったという気持ちはある」と述べた一方、続投を望む多くの声に「応えられないのは申し訳ない」「断腸の思い」と複雑な心境をのぞかせた。
自身の後任については「自分を捨てて、県勢発展、県民の幸せにつながることを主張し、実行する人」を望んだ。
次期知事選にはこれまでに、国民民主党を離党した岸本周平衆院議員(65)=和歌山1区、5期目=が立候補の意向を表明している。