給食で熊野牛を 国事業で地元業者ら提供
和歌山県内で丹精込めて育てられた熊野牛が幼稚園、小・中学校の給食に登場し、児童らのおなかと心を満たしている。新型コロナの影響で販路を失った生産者や加工業者、卸売業者らを支援する、農林水産省の国産農林水産物等販路新規開拓緊急対策事業の一環。
26日にはホテルや高級レストランなどに水産物と熊野牛の卸しを行うカネナカ水産㈱(和歌山市西浜)が市立雑賀崎小学校に、27日は総合食品卸売業者の㈲御納屋(同)が市立四箇郷小学校に熊野牛を提供した。
カネナカ水産では、かつらぎ町、紀の川市、和歌山市の幼稚園、小・中学校100校に熊野牛を提供しており、中井一統社長(48)は「新型コロナの影響を受け、ホテルやレストランから注文が来なくなり、熊野牛が売れなくなった。値段を下げると生産者は苦しみ、ブランドイメージを下げる。学校給食に提供して、子どもたちにおいしいものを食べてもらいたいと思った」と話す。
雑賀崎小学校では全校児童36人がぜいたくな熊野牛カレーを味わい、6年生の濱口優愛さんは「コクがあっておいしかった。家で食べる肉と違ってやわらかかった」と笑顔。
5年生の大峯飼魁斗さんは「牛肉がやわらかくて味が染みていておいしかった」と喜び、奥村孝校長は「肉のだしが出ていて、肉が固まりで入っていて楽しめる給食だった」と感謝した。
御納屋は、県内の公立小・中学校265校の5万2449人に2回ずつ、熊野牛を提供。永原圭祐代表取締役(54)は「県内には熊野牛をはじめ、野菜や果物など、他県に負けず劣らずの食材があること、食べて初めて分かるおいしさを知っていただく機会になれば」と話した。
四箇郷小学校(石神和弘校長)の2年3組では、配膳された熊野牛の焼き肉を前に約30人の児童らが目を輝かせた。同社の顧問、岩田泰之さん(53)が「和歌山で育った熊野牛をおいしくお召し上がりください」と呼び掛けると、児童らはうれしそうに手を合わせて「いただきます」と声をそろえた。
坂部瑠以さんは「楽しみにしてた。めっちゃおいしい」とにっこり。柏木隆都さんはおかわりした肉を頬張りながら「何回も食べたい。明日も食べたい」と喜んだ。
永原代表取締役は「子どもたちの『おいしかった』という声は最高。やって良かった」と目を細め、「今後も食育に貢献していければ」と意気込んだ。