大玉で美しい「なつおとめ」

前号では、甘さが際立つ希少な桃「まさひめ」を取り上げた。今週は、まさひめと同じく「あかつき」から作られた「なつおとめ」を紹介したい。
なつおとめは、農水省果樹試験場で、あかつきと「よしひめ」の掛け合わせから生まれたもので、2002年に品種登録されている。
果実は楕円(だえん)形で重さは250~330㌘で、あかつきと比べて大きめ。果肉は白色だが、核(中心部分)が美しい紅色をしているのが特徴。肉質は溶質で締まりがあり、繊維はやや多め。糖度はあかつきと同程度で13~15度。酸味は少なく渋みはない。果皮は白色だが、赤い着色はぼかし状にやや多く、玉ぞろいも良好。美しい着色が乙女の頬のように見えるということからこの名前が付けられたという。収穫期は8月上旬から中旬で、あかつきよりも10日ほど遅い。
農水省統計によると、生産地の第1位は香川県(15・7㌶)、第2位は新潟県(9・4㌶)、第3位は長野県(3・9㌶)、第4位は福岡県(3・6㌶)、第5位は山梨県と和歌山県(2・0㌶)となっており、和歌山県内でも比較的、手に入りやすい品種となっている。
品種登録前の1994年から98年に行われた、なつおとめの果実特性の調査で、各地域で試験的に栽培された結果が公表されている。それによると、和歌山県で収穫の果実の重さが361㌘、糖度14・9度と他の地域と比べて生育が最も優れている。
さまざまな地域で栽培されながらも、和歌山県で収穫されるものは同品種の中でも優れた存在。来シーズン、店頭で見つけたらぜひ購入し、その大きさと甘さを実感してほしい。
(次田尚弘/和歌山市)