伊都地方が誇る、和歌山の柿

前号まで16週にわたり、和歌山県内で収穫される桃を取り上げた。秋真っただ中の今週は、収穫量日本一を誇る「柿」を紹介したい。
紀の川に沿った丘陵地帯である伊都地方。かつらぎ町、紀の川市、橋本市、九度山町などでは柿の栽培が盛んである。複数の地質が帯状になった豊かな土壌で、保水と排水のバランスが柿の栽培に適しているという。また、瀬戸内式気候に属し比較的温暖であるが、葛城山と紀伊山地に挟まれた土地で昼夜の寒暖差が大きいことから、甘さや色づきに優れた高品質な柿が栽培できる。
2019年度における和歌山県の柿の収穫量は43400㌧で日本一。このうち、渋柿が8割を占めている。渋柿というと食用に向かないように思われるが、私たちが食する柿の多くは渋柿である。
渋みの原因は「水溶性タンニン」という物質で、これが口の中で溶け出すと渋みを感じるが、収穫後の柿をアルコールや炭酸ガスを用いて渋抜きの処理をすることで「不溶性タンニン」に変化させ、渋みを感じさせなくしている。皮をむき、干し柿にすることでも同様の効果を得ることができる。渋抜きした柿は加熱処理により再び渋くなるため、ジャムなどに加工されるのは甘柿が使用される。
渋柿の主な品種である「中谷早生(なかたにわせ)」、「刀根早生(とねわせ)」、「平核無(ひらたねなし)」などは、種が無いという特徴があり「和歌山県産たねなし柿」という名称で販売。20年に抗酸化成分が豊富であることが評価され、「ジャパニーズスーパーフード」として認定されるなど評価も高く、ブランド化戦略が行われている。和歌山県が誇る柿の数々を紹介していきたい。(次田尚弘/和歌山市)