半数以上が県内で栽培「刀根早生柿」
前号では、収穫量日本一を誇る柿の産地である伊都地方の概要と、種がない渋柿の品種を「和歌山県産たねなし柿」と名付けたブランド化戦略について取り上げた。今週は、この品種のひとつ「刀根早生柿(とねわせがき)」を紹介したい。
刀根早生は「平核無柿(ひらたねなしがき)」の枝替わりで、天理市の農家、刀根氏が台風で折れた平核無柿を若木に接木して育成したことにより、平核無柿より2週間程度早く実をつける柿ができた。それを育成し、1980年に品種登録。名称は育成者の名にちなんで付けられたという。
果実の大きさは250㌘程度。形は偏平で四角に角ばり、果皮の色は光沢のある橙色。食してみると甘味が強く果汁も豊富であり、程よい硬さ。カリッとした食感で、糖度は15度程度。
日持ちは良い方で、常温で2~3日程度でやわらかくなる。硬めを好む方はポリ袋などに入れ、冷蔵庫で保管するのがおすすめ。熟しすぎたものは冷凍することでシャーベットとして楽しむこともできる。
柿のシーズンの始まりを告げる品種として、9月下旬から10月上旬頃に収穫され、炭酸ガスなどを用いて柿渋を抜いた後に出荷される。
全体的に橙色に色づき、へたが身にしっかりと付いているものがおすすめ。収穫して間もない柿には果皮に白い粉が付いていることがあるが、これは果粉(ブルーム)といい、水分の蒸発を防ぐため、柿が自ら分泌したものである。
農水省統計(2019年産)によると、栽培面積の第1位は和歌山県(1287㌶)、第2位は奈良県(364㌶)、第3位は新潟県(203㌶)となっている。
全国の半数以上が県内で栽培される刀根早生柿。秋の訪れを感じながら食していただきたい品種である。(次田尚弘/和歌山市)