寺下整形外科 フィットネス備え新築移転

なくてはならない存在に

 

寺下整形外科・内科・リハビリテーション

 

3階建て新病院建物の外観

 

医療法人優進会三木町寺下整形外科(和歌山市三木町南ノ丁)が隣接駐車場に建設を進めていた新病院建物が完成し、21日に移転する。新たな建物の2階には独立した「通所リハビリテーション」、3階には「メディカルフィットネス」を新設。人生100年時代ともいわれる現代で重要視される「健康寿命の延伸」の一翼を担う、心強い〝まちのほっとステーション〟が中心市街地に誕生した。

 

フィットネス備え新築移転

 

1999年に建設された建物の老朽化に伴い、移転の話が決まったのはコロナ禍の少し前。当初は院内に地域の人が集える〝コミュニティの場〟をつくる計画があったが、コロナ禍で変更を余儀なくされた。

ピンチをチャンスと捉えてコロナ禍の経験を生かし、感染対策を徹底。新型コロナウイルスだけでなく、今後も未曾有の感染症に対応できるよう、人の動きを考慮した密を避ける空間づくりと、換気システムなどの整備に努めた。

寺下浩彰理事長(75)は「病院に行ったら感染リスクが高まる」といった従来の考えから、「感染の心配がないから病院へ行こう」と180度考え方を変えてもらえればと願う。

 

水盤に癒やされる明るい空間

 

密避け圧迫感なし リハビリ室は広々と

リハビリテーション中も人と人との距離をしっかり確保できるよう、2階のリハビリ室の広さは従来の2倍に拡大。1階に2室ある診察室も一般規格より広く設計したことで、従来と比べて幅が50㌢ほど広がった。

ベッド周りの空間が確保できたことで、圧迫感がなく快適に過ごしてもらえるように。ベッドの左右に回り込んで診察ができるようになり、寺下浩平院長(45)は「診察面でもメリットが期待できる」と話す。

 

卒業しない一貫型へ 効果的な運動指導

3階には新たに「メディカルフィットネス」を開設。メディカルフィットネスとは、医療的要素を取り入れたフィットネスのことで、生活習慣病の予防や改善のために運動が必要な人に、安全かつ効果的な運動指導を提供する。運動が苦手な人や持病がある人でも安心して運動を続けられるため、病気の予防改善が期待される。

同院ではこれまで、通院はリハビリテーションで筋力がつくまでを想定していたが、通所リハビリテーション(介護)を独立させ、メディカルフィットネスを開設したことで、通院終了後の健康増進に向けた体づくりが院内で一貫して行えるようになった。

特にメディカルフィットネスでは、「コロナ禍でも気にせず足を運んでもらいたい」との思いを込め、ほぼプライベートに近い少人数で使える「小ホール」と「中ホール」の2部屋を用意。各部屋にはシャワー室も併設されている。

1台で全身くまなく鍛えられる機械を厳選し、最新鋭のフィットネスマシンメーカー、テクノジムジャパン㈱の機械が導入されている。

 

メディカルフィットネスも併設

 

地域の人が集う場に まちづくりの一翼も

目指すのは、44年前の開業時から変わらず〝まちのほっとステーション〟であり続けること。前を通り掛かった人が、用はなくても気軽に入れるような場所を目指し、コロナ禍で先送りになったが、将来的には1階に水盤を眺めながらゆったり過ごせるコミュニティスペースの開設を予定している。

待合室には空港のラウンジのような質感にこだわったシートを用意。高い背もたれで長時間座っていても疲れにくく、自然光を多く取り入れられるガラス張りの設計で、明るい空間が広がっている。

寺下理事長は「あそこに行ったら何とかなると思ってもらえるような、なくてはならない存在でありたい」とほほ笑み、寺下院長は「より快適な場所で、より患者さんに近い存在になれるよう、医療を通じてにぎわいのあるまちづくりの一翼を担えれば」と笑顔。

人生100年時代における体のケアの重要性について、特に60歳ぐらいから大きな差となって現れるとし、「日頃から体をケアして過ごす人の助けとして、リハビリからメディカルフィットネスまで一貫してサポートしていければ」と意気込む。

 


 

役立つ医療で恩返し

理事長 寺下浩彰

1978年に開院し、99年からこの地に建つ同院がこの度、無事に移転の日を迎えることができ、関係各位には心から感謝申し上げます。

開院当初から常に地域の役に立つことを念頭に置き、喜んでいただける医療の提供にまい進してまいりました。

44年前の当時はコレラが流行しており、輸血が枯渇する中、母が劇症肝炎を患いました。コレラの流行に加えて夏の暑い時期でもあり、自らの体調管理が重要な状況にもかかわらず、母が交換輸血療法を受けるにあたり、多くの方の献血を頂きました。

残念ながら母は交換輸血後、30分間ほどしか意識は回復しませんでしたが、私が「何百人もの方の血液を頂いたのだから頑張らないと」と声を掛けると、母は「皆さまに感謝していると伝えてほしい」と言い、これが最後の会話となりました。

何としてでも母の遺志を継ぎ、「多くの方の献血を頂いた恩返しをしたい」と開院を決めたのが、同院の始まりです。開院当初から頭のCTを導入し、リハビリテーションを中心に皆さまの役に立つ医療の提供に努めてまいりました。

まだまだ力不足ではありますが、開院時の思いを次の世代に受け継いでもらいたいとの大きな期待とともに、さらなる恩返しができるよう、一層気を引き締めている次第です。

新型コロナウイルスなどの感染症対策にも工夫を凝らし、整った設備や環境で今後も皆さまに必要とされる医療を提供してまいります。

 


 

地域の患者様と共に

院長 寺下浩平

この度、無事に新築移転の日を迎えることができ、関係各位には心から感謝申し上げます。

私は祖母が亡くなった11日後に生まれました。もちろん会ったことがない祖母ですが、最後に私の名前を付けてくれたそうです。

子ども時代に父から祖母の話を何度も聞き、父が開業したきっかけ・診療における理念を聞いている中で、自分も「地域の方々に恩返しを」という祖母の遺志を継いでいきたいと思い、医師を目指しました。

勤務医時代は、主に手術目的で開業医の先生方からご紹介いただいた患者様を診察していたこともあり、整形外科医として手術が上手くなることに重きを置いていたように思います。

ところが、自身が開業医として診療するようになり、「できるだけ手術をしたくない!」という患者様がとても多いことに、改めて気付かされました。

では、そのためにどうすれば良いかを考えたところ、鍵となるのはやはり筋肉の強度や柔軟性を適正に保つことだと気付き、リハビリテーション治療を積極的に行ってまいりました。

しかし、旧クリニックでは広さの都合もあり、なかなか機器を使った本格的なトレーニングまで行うことができませんでした。そのため、初期のリハビリテーションが終了した患者様にはご自身でフィットネスジムなどに通ってもらうしかなく、その後の調子がどうなのか分からず、私もはがゆい思いでした。

新クリニックではメディカルフィットネスを計画しており、リハビリ終了後も引き続き患者様と目標を共有し、一緒に頑張っていけるのを楽しみにしています。