産直市場などで流通「甘秋柿」

前号では「富有柿」と「次郎柿」の良い点を生かし、果汁が多くサクサクした食感が特徴の「太秋柿(たいしゅうがき)」を取り上げた。今週も富有柿を親に持つ「甘秋柿(かんしゅうがき)」を紹介したい。
甘秋柿は農水省果樹試験場が「新秋柿(しんしゅうがき)」に「富有柿」と「興津16号」の交配種「18-4」を交配させて育成したもの。新品種の開発は1986年に始まり、新秋柿に18-4の花粉を交配。初めて実をつけたのは92年で、94年に1次選抜を通過。96年に「カキ安芸津14号」という系統番号が付けられ、適応性検討試験を経て、2002年に新品種に決まり、甘秋柿と命名。05年に品種登録が完了した。
果実はやや小ぶりで重さは200㌘程度。やや腰高で扁平な形をしている。食してみると肉質は緻密で果汁が多い。硬過ぎず、柔らか過ぎることもなく心地よい食感。完全甘柿であるため渋みなども感じられない。糖度は16~17%と高く、甘味が強いのが特徴。収穫期は10月中旬から下旬ごろで、収穫から17日程度日持ちするとされる。
栽培面積が少ないからか農水省統計で都道府県別の栽培状況を把握することはできないが、主に、夏秋期の気温が高い地域に適し、富有柿や次郎柿の栽培地域での栽培が適しているとされる。果皮に汚れが出る汚損果の発生が多く、果実が小ぶりであることから贈答品には向きづらく、主に産直市場などへ農家が持ち込み、販売されることが多いようである。
筆者は県内の産直市場で購入。栽培量は多くないと思われるが、県内でも出回る品種。収穫時期が短いこともあり、見つけたときはすぐに購入しておきたい逸品である。
(次田尚弘/和歌山市)