迅速に判断し避難所運営 和市で図上訓練
6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災の発生から28年目を迎えた17日、和歌山市は大規模災害を想定した初の避難所運営図上訓練を実施した。訓練は同市八番丁の消防局庁舎で行われ、避難所の開設や運営を担う市役所職員約250人が参加。突発的に発生した災害への対処能力の向上を目指し、連携を図った。
同市によると、市の避難所運営員は520人。災害時の避難所設営や運営を経験したことがない職員も多く、避難者から寄せられるさまざまなニーズに対応できる能力を身に付けてもらおうと、より実践的な図上訓練を企画した。
図上訓練は、震度6強の南海トラフ地震が発生し、避難所である小学校に人が殺到しているという想定で実施。5回に分けて行った。
午前11時に始まった第2部には職員43人が参加。訓練では、県が作成した防災学習ツール「きいちゃんの災害避難ゲーム」を使用し、「トイレを使わせてください」「授乳室を設置しよう」など、避難所で寄せられるさまざまな要望16問を出題した。
問題の中には、視覚障害のある人や性的マイノリティー(LGBTQ)など特別な配慮が必要な避難者を想定した質問や、発熱者への対応を問うものも。検討時間はそれぞれ60秒から120秒。短い時間の中で、迅速な判断力と適切な対応力を身に付けるのが狙いという。
介護が必要な避難者に対して「福祉スペースを設けよう」という問題には、「トイレが近い場所」や「1階の方が良いのでは」と参加者が提案。避難所という限られた空間の中で、どこに配置するのが最適か、意見を出し合っていた。
同市によると市内には現在、市指定避難所103カ所と屋内津波避難場所1カ所があり、災害発生時は各所に避難所運営員を5人ずつ配置。地域住民や施設管理者らと協力しながら運営を行うという。
図上訓練でリーダーを務めた用地課の橋本裕司班長(47)は「避難所運営がより具体的にイメージできた。さまざまな人がやって来るので体制を整えておくことの大切さを学んだ」と話した。
地域安全課の大河内崇弘課長(55)は「より実際の災害をイメージした訓練で、避難所運営では迅速な判断につながるのでは」と期待を寄せた。
同市では市民一人ひとりに災害に対する専門的実践的知識を身に付けてもらうことを目的に15日、市民防災大学を開講し、初回は66人が参加。官民一体となった防災意識の向上を目指している。