ベトナム大学生に奨学金と図書 ソロプチミスト
女性の地位向上や青少年育成、国際親善などに取り組む奉仕団体「国際ソロプチミスト(SI)和歌山紀ノ川」(上中公美会長)は、ベトナム国立ホーチミン市師範大学に対し、女性奨学金と日本語書籍の蔵書「SI和歌山紀ノ川文庫」を寄贈した。12年目を迎える継続的な取り組みで、日越両国をつなぐ人材の輩出に貢献している。
寄贈は、同団体の認証20周年記念事業として2012年に開始。和歌山大学教育学部教授を務めた江田裕介さん(現東京家政学院大学教授)が協力し、女性奨学金はホーチミン市師範大の障害児学科で学ぶ学生に対して、紀ノ川文庫は日本語学部に対して贈っている。
ベトナム戦争当時にアメリカ軍が散布した枯葉剤により、ベトナムでは多くの人々が重い疾患や障害に苦しみ、2世、3世にもその影響が続いている。同国は障害児教育に力を入れており、障害児学科はその取り組みに携わる人材を輩出している。
アルバイトで自ら学費を捻出しながら学ぶ学生が多い中、SI和歌山紀ノ川の奨学金により学業、研究に打ち込める時間が増え、人材育成に寄与している。
紀ノ川文庫は、毎年50冊ほどの寄贈を続け、日本語を学ぶ学生の教材や教員の研究資料として活用されている。ホーチミン市師範大には昨年、新図書館が完成し、新たに設ける予定の「日本コーナー」に紀ノ川文庫が収められることになっている。
寄贈開始当時の会長、南方千賀子さんは「長く続けさせていただき、本当にうれしい。これからもベトナムの子どもたち、学生のお役に立ちたい」と話す。
今回の寄贈は、和歌山大の竹澤大史講師と学生らがベトナムで行ったフィールドスタディーに合わせ、現地での両国学生の合同発表会の席上で実施。SI和歌山紀ノ川の会員は、オンラインでつながった和歌山市内のホテルから参加した。
障害児学科のホアン・ティ・ガー学科長は「学生の未来を明るくしてくれる、私たちにとって非常に深い意味を持つ奨学金だ」、日本語学部のブイ・フウン・ギー・リン副部長は「頂いてきた貴重な書籍は、学生、教員の勉強、研究に大いに役立っている」と話し、現地の学生からも感謝のメッセージが寄せられた。
上中会長は「学生の皆さんが、素晴らしい志を持って純粋に頑張っておられることに感動している。人材が育つ一助になればうれしい」と話し、今後も取り組みを続けていく。