鈴木屋敷を復元 姓の発祥地で式典
全国で約180万人いる「鈴木姓」発祥の地とされる、和歌山県海南市の藤白神社境内の「鈴木屋敷」が復元され、1日から一般公開が始まった。3月30日には竣工を祝う儀式と式典があり、藤白神社総代会の平岡溥己総代長は「鈴木のルーツとしてお披露目ができ、大きな宿願を果たせた。海南市を全国に発信する観光施設になれば」と期待を寄せた。
鈴木姓は、佐藤に次いで全国で2番目に多いとされる名字。鈴木一族は平安後期に熊野から藤白に移り住み、稲作や熊野信仰を全国に広めたとされる。屋敷は1942年に当主が亡くなってからは老朽化が進み、一部を残し崩壊寸前の状態になっていた。屋敷を保存、復元し地域の宝にしようと2013年に地元経済界の有志らが中心となって団体を発足させ、復元整備に向け寄付を募るなど活動を進めてきた。
17年から全国の鈴木さんを中心に、市のふるさと納税やクラウドファンディングで広く寄進への協力を呼び掛け、約1000人、総額約8000万円の寄付が集まった。
復元の総事業費は約1億9000万円で、復元した屋敷の面積は136平方㍍。4棟一棟の木造本瓦ぶき。建物が現存していた座敷棟と北北棟、土塀などは保存修理し、失われた玄関棟、北棟を復元した。瓦や土壁なども現存の建物から再利用し、屋根の西側の瓦は現存のものを使い、東側は新しい。
座敷棟は当初材がよく保存されており部材を再利用。復元した座敷棟では、修復を施した柱や梁などを見ることができる。
池泉庭園とともに『紀伊国名所図会』に描かれた江戸期の歴史的景観を再現しようと整備。復元した座敷棟の約10㍍ある縁側からは、青々とした芝生や四季折々の花木を眺められ、池泉庭園の景色が広がる。新設された玄関棟と北棟は、鈴木の歴史が分かる資料館として展示が行われる。
境内で行われた神事には約50人が参加。鈴木屋敷復元の会や工事関係者の他、秋田県や宮城県など全国から「鈴木さん」20人以上が参加した。
関東藤白鈴木会のメンバー鈴木久元さん(85)は「この日を待ちわびていた。鈴木姓としての誇りの場ができた。全国の鈴木さんに常時来てほしい」と話し、同復元の会唯一の「鈴木さん」である鈴木猛さん(89)は「鈴木さんの一番の癒やしどころ。文化や芸術の発信基地として使っていきたい」と笑顔だった。
拝観料は300円。午前10時~午後4時。定休日は月、火曜(休日の場合は除く)と年末年始。