SNSの被害防げ 県警ら啓発教材を開発
スマートフォンの普及とともに進む青少年のSNS犯罪被害防止を目的に、和歌山県警と県教委、一般財団法人LINEみらい財団の3者は、中高校生向け啓発教材「SNSによる社会への発信を考えよう」を共同で開発。今後、県内の中学校を対象に、同教材を活用した情報モラル教育の充実を図る。
内閣府の調査(2022年)によると、スマートフォンでインターネットを利用していると回答した青少年のうち、76%が「投稿やメッセージ交換をする」と回答。SNSが身近になっている一方で、自分の裸や下着姿の写真を相手に送ってしまういわゆる「自画撮り被害」や、反対に友人にそうした写真を要求し送らせるなど、加害者になってしまう問題が起こっている。
今回開発した教材は、そういった被害、加害を防ぐために企画。常葉大学教育学部講師の酒井郷平さんの協力の下、3者が共同で取り組んだ。
学びのポイントは大きく三つある。まずはネットの特性を理解し、情報発信する際のリスクについて考えること。次に、自撮り写真など性的な写真を発信する際、どういった犯罪リスクがあるのか法的知識を学び、通報できる基準の明確化や加害の抑制につなげる。最後は、トラブルが起きた場合の対処方法を考え、周りに相談することの大切さを学ぶことで、被害が広がることを防ぐ。
教材はワークショップ形式。生徒同士が議論し合い、学びを深める。具体的な事例を学ぶことで、トラブルを予見し、回避する力を身に付けてもらうことが狙い。
このほど教材を活用した公開授業が、和歌山市太田の県立向陽中学校で行われた。
ワークシートを活用した授業では、カフェを訪れたことをSNSに投稿する際、どんなリスクがあるかを議論。生徒からは「顔出しは駄目だが、マスクをしていれば大丈夫」という意見があった一方、「店の外観を出すだけでも、近所に住んでいるということが分かってしまうのでは」と個人情報の特定を心配する声も上がった。
また、水着の自撮り写真を要求された場合、どう対応すべきかを話し合った他、県青少年健全育成条例や児童ポルノ禁止法で「罪になる」場合の罰則について学んだ。
授業を受けた小林春樹さん(14)は「仲間内でふざけてしたことでも罪になることがあるということが分かった」、木下恵李さん(14)は「相手を信頼して隙をみせるのが怖いなと思った。ちょっとおかしいなと思ったら、周りの大人にきちんと相談したい」と話していた。