和大松下会館「モダン建築」に 県内で初選定
和歌山大学松下会館(和歌山市西高松)が「日本におけるモダン・ムーブメント」建築に県内で初めて選定され、17日に同館玄関前で選定プレートが贈呈された。モダニズム建築に独自のデザインが融合した建物であること、同市出身の実業家・松下幸之助が故郷の学生のために寄付したことなど、地域遺産としての価値などが評価された。
「日本におけるモダン・ムーブメント」は、20世紀の建築における重要な潮流だったモダン・ムーブメントの成果を記録し、現存する近代建築の保存のために活動する国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」の日本組織が選定。6月に松下会館を含む16件が新たに選ばれ、計280件となっている。
松下会館は、旧和歌山大学経済学部の敷地にあり、1961年に竣工。日本の近代化における様式主義建築を代表する建築家の一人、渡辺節が晩年に手掛けた建物で、同市出身の実業家・松下幸之助の寄付によって建てられた。
鉄筋コンクリート2階建て。面格子を中心にタイルを並べた左右対称の外観で、穴開きブロックを用いたデザインが特徴的な建物。
2018年には解体の危機にあった同館を何とか地域に残したいと、日本建築学会近畿支部が保存・活用を求める要望書を同大学に提出。
県建築士会などが見学会や講演会を開き、その価値や魅力を広く市民に発信してきた。地元の建築関係者らによる活動が実を結び、大学が創立70周年を迎えた2019年、記念事業として松下会館再生事業がスタート。松下の思いを受け継ぎ渡辺の設計を生かしながら、ことし2月にリニューアルオープンした。
贈呈式では、ドコモモの日本支部「ドコモモジャパン」前理事で、京都工芸繊維大学助教の笠原一人さんが、和歌山大学の本山貢学長に選定プレートを手渡した。
また、この日は、県建築士会和歌山市支部の主催で、同館隣の県立図書館2階で記念講演会があった。本山学長は「市民の皆さんの力を借り、この松下会館をもう一度活性化させていくのが、われわれの使命。次世代の教育、建物の継承と保全をしっかりと担っていきたい」とあいさつ。
笠原助教が「文化遺産としての松下会館」をテーマに講演し「柱や梁を強調し、モダニズム建築の一つだが、古風な様式性を随所に見いだすことができる」と特徴を紹介。「様式性とモダン性が共存し、渡辺節独自のモダニズムの在り方を示している」と話した。
この他、髙砂正弘和歌山大学名誉教授が「松下会館の魅力」と題して話し、意見交換や建物の見学なども行われた。