壁に空洞、厚さ不足 県発注の八郎山トンネル

和歌山県は27日、12月に供用を予定していた那智勝浦町の県道長井古座線「八郎山トンネル」で、覆工コンクリートに空洞があり、厚さが不足している施工不良が判明したと発表した。設計では30㌢必要な厚みが、薄いところでは3㌢しかなく、県は施工を共同で請け負った㈱淺川組(和歌山市)と㈱堀組(田辺市)に対し、6カ月の入札参加資格停止措置を取った。

県は、那智勝浦町中里から串本町上田原を結ぶ同線の3・4㌔のバイパス整備を2012年度に事業化し、ことし12月の供用開始を目指してきた。八郎山トンネルはこのうち町境に位置する全長711㍍に当たり、工事請負金額は約20億3800万円。

トンネル工事は昨年9月29日に完成し、県は検査、引き渡しを受けていたが、照明設置工事で壁に穴を開けた際、覆工コンクリートを貫通し、内部に空洞があることが判明。さらに調査した結果、空洞と覆工コンクリートの厚さ不足は全体の約7割にも及ぶことが分かった。

2社が県に提出した書類には、設計通りに完成しているとの内容が記されていたが、県の聞き取りに対し2社は、施工不良を認識していたにもかかわらず、適切な措置を怠ったことを認めているという。

施工不良の原因は調査中で、県は下請け業者についても調べを進めている。供用開始は時期未定で延期となり、専門家を交えた技術検討委員会を設置し、対策の工法を決定した上で、請け負った2社の費用負担で補修工事を行う予定。現時点で補修工事の規模がどの程度になるかは分かっていない。

県は、職員の立ち合いによる施工中の段階確認も不十分だったとし、現在施工中の他のトンネルの請負業者や各振興局建設部に対し、覆工コンクリート施工の段階確認を確実に行うよう周知し、再発防止に努める。

県の福本仁志県土整備部長は「今回のことは非常に残念。事業者とお互いに信頼関係を持って、良いインフラを残していくのが使命だ。県としても段階確認の不足という落ち度があり、大変申し訳ない。供用が大幅に遅れることになり、深くお詫びしたい」と陳謝した。

施工不良が発覚した「八郎山トンネル」(県提供)