中国からの訪日団体旅行が解禁に 体制異なる隣国、対話と交流が重要
先日、呉江浩駐日中国特命全権大使が私を自民党本部に訪ねて来られ、日中関係のみならず昨今の国際情勢について意見交換を行いました。今年は日中平和友好条約締結45周年という記念すべき年です。しかしながら、私は現在の日中関係があるべき姿であるかと問われれば、決してそうでは無いと思います。未だに「日中友好」を唱えなければならないのは、それが成熟していない証と言わざるを得ません。
特に近年は中国の目覚ましい経済成長とともに日中関係も紆余曲折の歴史を辿って来ました。2010年に日中両国のGDPは逆転し、中国のGDPは昨年末に日本の4倍を超えました。今や日本にとり中国は最大の貿易相手国であり、中国にある日系企業の拠点数は3万拠点を超える数にのぼります。この現実を見る限り、田中角栄先生が歴史的な日中国交正常化が成し遂げられたのは、田中先生の先見の明と決断力があったからと再認識するところです。
一方で、近年の中国において急増し続ける軍事費は国際社会に覇権主義を印象付け、世界に脅威を抱かせています。また、尖閣諸島周辺海域における中国公船の活動は看過出来るものではありません。経済依存と軍事的脅威が常に背中合わせにあるのが昨今の日中関係と言えます。この他にも、現状の日中関係には、福島第一原発のALPS処理水放出に伴う日本産海産物の輸出規制や、反スパイ法改正による邦人拘束事案などの懸案が未解決の状況です。
中国は体制の異なる隣国です。しかも新型コロナウイルスの影響で両国の往来や交流はなくなり、相互不信の連鎖に陥っています。私はいかなる懸案や意見の相違があったとしても、体制の異なる隣国同士だからこそ、対話や交流を決して途絶えさせてはならないと考えます。冒頭の呉大使との会談に際してもその事を強調しました。
中国は8月10日から新型コロナウイルスの影響で禁止していた訪日団体旅行を解禁する事を発表しました。この事は日本の経済界や地方の知事や議会から強くご要望頂いていた事項です。観光・旅行業は極めて裾野の広い産業です。そしてその波及効果は地方を含めた全国の各地に及びます。コロナ禍で疲弊した地域経済にプラスの効果をもたらすと予想されます。「観光」は易経にある「国の光を観る」が語源になっていると言われます。まさに互いに訪問し双方の良い面(光)を観る事が重要です。
日中関係のみならず他国との関係は、政治を担う双方のリーダーが緊張感を持ちながら対話を重ねていくことが重要です。それと同じく重要な事は民間交流、地方間交流、青少年交流等により交流を重ねる事が将来的に国の平和と安定をもたらすと考えます。
78回目の終戦記念日を前に、対話と交流を絶やさず、世界平和と繁栄のために、全力を尽くすことを誓います。