紀の川流域で栽培盛んな「ぶどう」
前号では、地域の伝統野菜として知られる、メロン変種の「マクワウリ」の歴史と味わいについて取り上げた。9月に入り、旬の真っ只中であるのが「ぶどう」。今週は、ぶどうの歴史を紹介したい。
ぶどうの原産地は中近東で、古代ヨーロッパや中国に伝わったとされる。歴史は古く、紀元前3000年ごろにはカスピ海沿岸などで栽培が始まっていたという。日本では奈良時代に
中国から伝来。ヨーロッパブドウが鎌倉時代初期から現在の山梨県甲州市で栽培され、やがてこの地域の特産品となった。
その後、周辺地域や関西に広がり、明治に入ると欧米から新たな品種が多数栽培されるように。しかし、乾燥を好むヨーロッパブドウのほとんどが日本の気候になじめず、栽培は困難を極めた。一方でアメリカブドウは日本でも栽培が可能で、「デラウェア」や「キャンベル・アーリー」などの品種が普及。匂いがきついことからワインには適さず、主に生食用として親しまれるようになった。
県内では主に、和歌山市、橋本市、かつらぎ町、有田川町で栽培。紀の川の流域は土壌が豊かで、保水性と排水性のバランスが良く、降水量は比較的少なめで、昼夜の気温の高低差が大きいという特徴がある。水はけが良く、降水量が少なく、一日の気温差が大きい土地を好むブドウにとって、この地域は栽培地として適している。
近年、品種が増え、県内では少なくとも20種類が栽培されているといわれる。この時期、産直市場などではさまざまなブドウを見かけ、2006年に品種登録された、人気のシャインマスカットもある。
栽培地の気候や農家の栽培法により、味わいが大きく変わるぶどう。県内で収穫される数々の品種を紹介していきたい。
(次田尚弘/和歌山市)