肉厚でコクがある「巨峰」

前号では、家庭で親しまれるぶどうの代表格として知られ、150年もの歴史を持つ「デラウェア」を取り上げた。今週も、かつてから家庭での親しみが深い「巨峰(きょほう)」を紹介したい。
 巨峰は「石原早生」と「センテニアル」というぶどうを親とし、1937年から育成され、42年に静岡県で誕生した品種で、正式な名称は「石原センテニアル」。育成地から富士山が見えることにちなみ、巨峰の名で55年に商標登録された。
 果皮は紫黒色で1粒あたりの重さは10~15㌘と大きい。果肉はしまっており果汁が多い。香りが良く、糖度は18~20度と甘味が強いが、その中に酸味とコクを感じることもできる。
 1房あたりのサイズは大きいもので500~600㌘程度にまで成長するが、糖度と1房あたりの粒の数は比例しており、粒の数が少ないほど甘味が増すといわれている。そのことから、生産者は、房の大きさと甘味のバランスを考え、適度な間引きを行うなどして調整している。「ピオーネ」などの品種は巨峰を親として開発されたもの。今後、このコーナーで紹介していきたい。
 旬は露地物で8月から10月ごろ。ハウス栽培のものは5月下旬ごろから出回る。2020年の農水省統計によると、栽培面積の第1位は山梨県(1019㌶)、第2位は長野県(685㌶)、第3位は福岡県(358㌶)となっている。県内でも栽培されており、全国順位は第12位(48・2㌶)。
 有田川町の観光農園団地「有田巨峰村」は、気軽にぶどう狩りを楽しめる施設。開園時期は園により異なるが、概ね8月上旬から9月中旬にかけて開園し、多くの観光客でにぎわう。
 まもなくシーズンを終えるが、紀北地域は新鮮な巨峰が手に入りやすい。ぜひ、その味わいを楽しんでほしい。(次田尚弘/和歌山市)