「避難スイッチ」考える 近畿地方治水大会
近畿地方の治水事業を促進するため、必要な予算確保に向けて国への要求の決議や提言などを行う2023年度の「近畿地方治水大会」が17日、和歌山市友田町のホテルグランヴィア和歌山で開かれ、近畿2府6県の自治体、河川関係団体の関係者ら約400人が参加した。専門家による講演の他、神出政巳海南市長ら市町村長による防災対策や実際の災害対応に関する報告、意見発表も行われた。
県、全国治水期成同盟会連合会、県河川協会が主催。
第1部は特別講演で、「なぜ今、『避難スイッチ』が必要とされるのか―水文気象情報を通じた住民の意識変革―」と題して、香川大学創造工学部の竹之内健介准教授が話した。
竹之内准教授は、行政による災害時の避難情報が、より早期化、安全重視の傾向を強める一方、十分には住民に使われていないと指摘。住民が災害対応のタイミングを考え、避難のきっかけとする「避難スイッチ」を前もって決めておくことが大切であり、各地の事例を紹介しながら、自分たちが暮らす地域にとって危険な雨量や水位などの特徴を知り、地域と行政が連携して共有しておく重要性を強調した。
第2部は、主催者や来賓のあいさつに続き、市町村長が意見発表を行い、県内から神出海南市長、岡本章九度山町長が登壇した。
梅雨前線と台風2号による6月2~3日の豪雨災害について報告した神出市長は、貴志川、亀の川、日方川、加茂川の市内主要4河川が氾濫し、浸水被害が住家と非住家を合わせて1962件、市道や河川、農道など公共土木施設の被害が776カ所、主要農産物のミカンの被害が6783万円に上るなど被害状況を詳細に説明。災害ごみの対応や家屋の被害調査など、県内外の自治体から受けた多くの支援の重要性にもふれ、今後の治水対策の早期完成などに意欲を示した。
大会決議では、国土強靭化(きょうじんか)予算などを活用して実施してきた河川改修などの事業効果が顕著に現れているとし、継続的に事前防災対策を推進する必要性を強調。気候変動による水災害の激甚化、頻発化を踏まえ、ハード、ソフト両面による総合的、多層的な対策を実施することが重要であり、河川管理施設の機能を最大限に発揮できるよう、長寿命化計画に基づく適切な老朽化対策などが不可欠とし、関係施策の充実、加速化を求めた。