和歌山バス3路線を廃止へ 来年9月末に

和歌山バスは28日、赤字が続いている鳴神線、雑賀崎循環線、六十谷線の和歌山市内3路線を、来年9月末をめどに廃止すると発表した。公共交通ネットワークの持続が市内各地でも課題となる中、自家用車などの利用が困難な沿線の高齢者らにとって、さらに外出や移動がしにくくなる事態が予想される。

同社によると、鳴神線はJR和歌山駅―紀伊風土記の丘を主な発着地とする4・5㌔、雑賀崎循環線は南海和歌山市駅―JR和歌山駅を主な発着地に雑賀崎地区などを巡る19・8㌔、六十谷線は南海和歌山市駅―川永団地を結ぶ14・5㌔の路線。

いずれも赤字幅が大きい不採算区間であり、慢性的な運転手不足に加え、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が制限される「2024年問題」への対応を進めている中、運行の維持は困難と判断した。

現在は、平日ダイヤで一日当たり鳴神線が19便、雑賀崎循環線が25便、六十谷線が23便の運行だが、来年春のダイヤ改正で減便を行い、9月末の廃止に向けて手続きを進める。

廃止する区間の今後について同社は、市と協議を続けていくとしている。

鳴神線を利用している同市鳴神の女性(81)は「夫が運転免許返納を考えているので、これからはバスに頼らざるを得なくなると思っていた。廃止されたら本当に困る。病院や銀行にも行けなくなる。この歳で電動スクーターに乗り始めるのも怖いし、毎回タクシーを使うほど余裕もない」と困惑した様子で話した。

持続可能な交通ネットワークの形成を目指し、市は公共交通が不便な市内7地区で、商業施設や病院などを経由して既存の鉄道駅などに接続する「地域バス」の試験運行を行い、すでに実施している紀三井寺地区に加え、11月から有功、木本・西脇の2地区で新たに運行を開始。川永地区でも、本格運行を視野に今月から実証運行を行っている。

地域バス以外の交通手段確保の手法では、デマンド型乗合タクシーなども検討されており、今回の廃止路線が通る地区でも、新たな対策の必要性も含め、検討が待たれる。

 

廃止が決まった六十谷線のバス(南海和歌山市駅)