通信の遮断で苦慮 緊急消防援助隊が帰庁報告
能登半島地震で石川県に派遣されていた和歌山県からの第1、2、3次派遣隊の和歌山市消防局の計141人が帰庁。11日、第3次派遣隊の上辻泰寛大隊長(50)が尾花正啓市長に隊員の無事と現場での活動内容を報告した。
第1次隊は1~5日、2次隊は4~8日、3次隊は7~10日の日程で能登町や輪島市などで行方不明者の捜索や転院搬送などの活動を行った。
報告で第1次派遣隊の黒田滋之大隊長(53)は「能登半島の先端に向かう、のと里山海道(自動車専用道路)の徳田大津インターから先は緊急車両も通行止め。下道で迂回(うかい)しながら走行した。通常2時間ほどで行けるところに8時間かかった」「至る所で道路が遮断されているので部隊が進入できなかったと。先端に至るほど被害は大きなものだった」と報告。
第2次派遣隊の大林正幹指揮隊員(39)は、5日、倒壊家屋に取り残された高齢男性1人の捜索活動を行い、亡くなった状態で発見したこと、土砂に埋まった倒壊家屋の安否不明の2人を捜索したが、発見には至らなかったと報告。
第3次派遣隊の上辻大隊長は、3次隊は雪の影響が大きく、宿営しているテントにも30~40㌢積もり、降雪の中の活動に苦慮したことを伝えた。
また、輪島市名舟町で、倒壊家屋で1人の安否不明者の捜索活動を行ったが、発見には至らなかったことを告げた。その後、県の派遣隊は山梨県の大隊と引き継ぎ、帰庁となった。
尾花市長は「危険な中、懸命に任務を果たしてくれて心から感謝申し上げる。無事に帰ってきてくれて良かった。市の誇りです」とねぎらった。
「経験を生かしたい」日頃の備え啓発も
尾花市長から、活動を通しての困ったことや気付きなど、今後の課題などを聞かれ、黒田大隊長は「通信が遮断され、情報が全く入ってこない。衛星電話を持っていったが台数が足りなく活動に苦慮した。命令が入りづらかった」と話し、上辻大隊長は「和歌山大隊は雪に慣れていない。亀裂が入った道路にも雪が積もり状況が分からない。消防車の運転などに苦慮した」「資機材やストーブなどの燃料の調達にも苦労した。通信が途絶えていたので調達が遅れた」と伝えた。
また、「和歌山で万が一のときは、受け入れ側になる。全国の消防隊に被害状況の伝え方や連携方法など勉強になった。経験を生かしたい」といい、「食料や飲料水の備蓄、タンスを固定するなど少しのことだが日頃の備えを十分にしてほしい」と県民に呼びかけた。