新浄水場建設など了承 和市検討会議

有識者らによる和歌山市新水道事業ビジョン検討会議は19日、市役所で最終会合を開き、市北部に新浄水場を建設する事業を含む同ビジョンの原案を了承した。六十谷水管橋の崩落を教訓に、大規模災害などに備えて安定的な給水体制の確立を図る。新浄水場は2028年度に設計に着手し、33年度の完成を目指している。

同ビジョンは24年度から10年間の水道事業の施策を示すもの。検討会議(座長=江種伸之和歌山大学システム工学部教授)は22年8月に始まり、今回が6回目となった。

21年10月に発生した六十谷水管橋崩落に伴う市北部約6万世帯の大規模断水を受け、北部の安定的な給水対策が主要な論点となり、市は当初から、紀の川の地下を通す配管整備による北部への送水路の複線化と、新浄水場建設の両方を目指す案を示し、複線化は先行して事業を開始していた。

新浄水場の建設は、当初案では事業費約255億円とされていたが、工業用水道である六十谷浄水場を活用し、一部施設を共用して建設することなどで、129億円に事業費を縮減できる見込みとなった。同ビジョン原案では「(既存の)加納浄水場の供給能力が低下した場合などの事態にも対応が可能になります」としている。

今回の会議では、昨年12月からことし1月にかけて行ったパブリックコメントで寄せられた111件の意見の説明もあった。新浄水場建設に関する意見は15件で、うち10件が賛成、2件が反対、その他3件で、市はおおむね市民の理解を得られたとの認識を示した。

パブリックコメントでは、検討会議の論点にはならなかった水道の広域化・民営化への意見が86件と最も多く、大半の83件が反対する内容。利益追求による事業内容の低下、責任の所在が不明確になること、他地域の問題が市に持ち込まれかねないことなどへの不安の声などが見られた。

市は、広域化や民営化を目指していることはないとし、予想外に市民の不安の声が多かったため、同ビジョン原案に「安心・安全で安定した水道水の供給という責務を果たすため企業局が水道事業の主体性を持ちつつ、民間の技術力等を活用した効率的な事業運営にも取り組みます」との文言を追加した。

同ビジョンは今後、市議会への原案の報告を経て、3月下旬に正式に公表される予定。併せてパブリックコメントの意見に対する市の見解もホームページ上で示すとしている。

新浄水場建設事業などを了承した検討会議

新浄水場建設事業などを了承した検討会議