「山椒」の歴史と種類
前号より、全国1位の生産量を誇る、ミカン科の落葉低木である「山椒」を取り上げている。今週は、山椒の歴史や種類について紹介したい。
山椒の歴史は極めて古く、出土した縄文時代の土器に付着が認められ、その頃から利用されていたものと思われる。日本書紀には「山椒(当時はハジカミと呼ばれた)の痺れるような感覚で、敵の攻撃を忘れない」と記されている。
江戸時代に入ると「山中から多く産出し近頃はおしなべる存在である」と記述された文書が現れ、この頃には、日本人にとっておなじみの香辛料になったといえよう。いわば、「日本最古のスパイス」である。
山椒にはさまざまな種類が存在する。うなぎなどの料理に使用される「ぶどう山椒」、これと近縁とされ、香りに優れ、実の大きさが特徴の「朝倉山椒」、飛騨地方の高原で栽培され独特の辛さと持続性のある香りをもつ「高原(たかはら)山椒」、中華料理の麻婆豆腐の辛さを引き立てる花山椒として知られ、中国北部の華北が原産で漢方薬としても活用される「華北山椒」、ミントのような清涼感があり、高木にまで成長し大きな葉が特徴の「烏(からす)山椒」が知られている。
食し方は、山椒の部位により多様。3月ごろの香りの良い若葉を「木の芽」と呼び、吸い物などに使用され、春の訪れを感じさせてくれる。4月ごろに咲く黄色の花は佃煮などに使用され「花山椒」として。5月から6月にかけて収穫される青い実を「実山椒」や「青山椒」と呼び、ちりめん山椒などに。秋になると実が十分に熟し種子ができる。それを「割り山椒」と呼び、乾燥させた外皮を粉末にしたものが「粉山椒」になる。
来週は、和歌山県内で栽培される品種について紹介したい。(次田尚弘)