県省の友好を原点に歩む DUPLO山東①

DUPLO山東の社屋前で佐野総経理㊥、申副総経理㊨、趙部長㊧
DUPLO山東の社屋前で佐野総経理㊥、申副総経理㊨、趙部長㊧

和歌山県との友好提携40周年を迎えた中国・山東省にいち早く進出し、信頼と地盤を築いてきた県内企業がある。デジタル印刷機や多機能裁断機の開発・製造などを手掛けるデュプロ精工㈱(紀の川市上田井、橋口英樹社長)の現地法人「DUPLO(山東)辧公設備有限公司」(DUPLO山東)。両県省の提携を契機とした技術協力が同社設立につながっており、総経理(社長)の佐野健さん(53)は「私たちは友好関係とともに歩んできた」と話す。

デュプロ精工と山東省との関係は、両県省が友好提携を締結した1984年にさかのぼる。来県した同省の訪問団が県内企業の視察を希望し、受け入れたのが同社だった。

86年、国営企業である山東電影機械廠から技術協力の要請を受けたデュプロ精工の初代社長、横川外二さん(故人)は、これに応じることを決断。88年、技術供与による輪転機の生産が開始され、山東電影機械廠の業績を押し上げた。

両社は協力関係を発展させ、97年にDUPLO山東の前身となる合弁会社「済南迅普精工辧公設備有限公司」を省都・済南市に設立。2002年には同社をデュプロ精工が独資化し、現在のDUPLO山東となった。

済南市は人口約920万人の大都市。1983年に県都・和歌山市と友好提携し、40年以上の交流の歴史がある。

「泉の街」と呼ばれる豊かで美しい水に恵まれた都市であり、製薬会社などが多く立地するが、デュプロ精工にとっては、企業活動の利便性から進出を決めたのではなく、両県省の友好提携が原点となっている。

日中両国、両県省の友好に貢献する企業活動をたたえ、横川さんは90年に中国国務院の姚依林副総理から表彰を受け、94年には済南市の謝玉堂市長から栄誉市民の称号を贈られた。両県省の要人が集い、友好提携35周年、40周年を祝った記念式典にも、同社の代表が続けて出席している。

済南市の謝市長㊧から栄誉市民の称号を贈られる横川初代社長㊨(デュプロ精工提供)
済南市の謝市長㊧から栄誉市民の称号を贈られる横川初代社長㊨(デュプロ精工提供)
日本人社員は1人

DUPLO山東は、企業向けに開発された済南市内の区域の中にある。従業員96人のうち日本人は総経理の佐野さんのみ。佐野さんは2005年からDUPLO山東で勤務し、紀の川市の本社と行き来する日々を送っており、磨いた語学力を生かして、職場のコミュニケーションはもちろん、商談も全て中国語で行っている。

主なポストには日本人を配置するのが進出企業では一般的だが、DUPLO山東では、現地で働く中国人従業員も重要ポストを担う。16年から総経理を務める佐野さんの前任も中国人だった。

主力製品はデジタル印刷機。コピー機よりも印刷スピードが速く、コストも安いことから、学校向けの出荷が大半となっている。年間生産台数は6000台超で、中国国内向けが約80%を占め、北米や欧州、東南アジアなど世界各地にも輸出している。

コロナ禍を経て、中国のデジタル印刷機の市場規模がやや小さくなる中、デュプロ山東はシェアを拡大。中国の省・自治区ごとに約30カ所ある代理店に、営業部門の7人が販売拡大を働きかけ、佐野さんも商談で各地を飛び回る活動が功を奏している。

デュプロ山東は、本社と同じく「お客様に選ばれ、喜ばれる企業になる」との理念を掲げる。「自分たちだけで企業活動はできない。代理店も利益を得て、ユーザーに喜んでもらえることを常々考えている。そのためには製品の品質がとても大事になる」と佐野さんは話す。【②に続く】