カイロス2号機 12月に串本で打ち上げへ
宇宙事業会社のスペースワン㈱(東京都)は25日、和歌山県串本町で3月13日に打ち上げ直後に爆発した小型ロケット「カイロス」の初号機について、推力が予測より低く、速度が不足し、ロケットに内蔵された自律飛行安全システムが正常な飛行範囲を逸脱したと判断し、自ら爆発したことが原因だったと発表した。改善の上、2号機は12月中の打ち上げを目指し、詳しい日程は2カ月前の発表を予定している。
カイロス初号機は発射から5・3秒後、高度100㍍に満たない段階で、飛行を中断、機体の爆破に至り、同社は豊田正和社長を本部長とする対策本部を立ち上げ、原因究明を進めていた。
遠藤守取締役は、ロケットの飛行計画を立てる際、固形燃料のサンプルを使って燃焼速度を計測する過程に不具合があり、燃焼速度を実際より高めに予測していたことにより、ロケット第1段の推力が計画より数%不足し、自律飛行安全システム稼働の要因になったと説明。さらに、同システムを搭載したロケットの打ち上げは国内初であったことから、飛行正常範囲を厳しく設定していたこともシステム稼働の原因の一つとした。
ロケットの機体や燃料に問題はなく、同システムも設計通り正常に作動しており、同社は、燃焼速度の計測過程を改善するとともに、安全を確保した上で同システムの飛行正常範囲の設定を見直すことで、2号機の打ち上げは可能と判断。遠藤取締役は「日本には固形燃料ロケットの歴史があるが、全く新しいカイロスに合わせた設計の中で、不確定性が出てしまった。実績を重ねることで、さらに信頼性の高いロケットになると信じている」と述べた。
初号機には、内閣府の小型衛星1機を搭載していたが、2号機には日本政府の衛星ではなく、50㌔程度の小型衛星1機と、超小型のキューブ衛星4機の計5機を搭載する予定。打ち上げ手順などは初号機と変更はなく、太陽同期軌道、高度500㌔への衛星投入を目指す。
県は、3月の初号機と同様、2号機打ち上げの際も見学会を開催する方向で、スペースポート紀伊周辺地域協議会で検討するとしている。
豊田社長は「次のミッションでお客さまの信頼を得るに足る対策を講じることができたと信じている。全身全霊を尽くして、2号機のミッションを達成したい。ぜひ皆さまにも応援していただきたい」と話した。
知事は成功に期待 発射見学も実施へ
カイロス2号機の打ち上げ予定が12月と発表されたことを受け、岸本周平知事は26日の定例記者会見で「県としては大歓迎している。改善点についても詳細な説明があり、かなりの確度で今回は成功するのではないかと期待も高まっている」と述べた。
発射の見学会については、前回同様の2カ所をベースに実施を考えているとし、渋滞対策を厳重に行うなど、改善を検討する。3月に打ち上げが一度延期される原因となった、警戒区域内への船舶の侵入がないよう、事前の告知を早期から行う考えも示した。