分かち合う場を 難病患者・障害者が意見交換
難病や障害を抱える人たちが集い、希望を持って生きることの大切さを分かち合う場をつくる活動が、和歌山県内で始まっている。全身の筋肉が徐々に動かなくなる神経難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者である和歌山市の北畑達哉さん(64)が発起人となり、難病患者や障害者、支援者の代表と県行政、県議らを交えた意見交換会を重ねている。
北畑さんは昨年8月にALSと診断され、「普通に過ごせるのは2~3年」と医師から宣告された。患者や家族が希望を見つけられる活動がしたいと、ことし3月にフランスのALS患者の日常を追ったドキュメンタリー映画「不屈の夏」の上映会を同市で開き、立ち見が出るほどの盛況で、大きな反響があった。
上映会を契機に、ALSの患者・家族だけでなく、さまざまな背景を抱えながら病気や障害と向き合い、模索しながら生活している人たちがつながる場をつくりたいと、6月から意見交換会を開始。今月9日には県庁で2回目を開き、県内の難病患者や障害者の団体、家族会などの役員と県福祉保健部の職員、北畑さんの活動に協力する森礼子県議、三栖拓也県議らが参加した。
北畑さんは、意見交換会を立ち上げた理由を、「ここに来れば、一緒に考え、語り合い、気持ちを分かち合える仲間がいる。最後の最後まで希望を持って、生きることの大切さを分かち合いたいという思いから発足させた」と語り、参加者には「明るく前向きに」率直な思いを話す場にしようと呼びかけた。
参加者は、さまざまな経緯で障害や難病になったこと、当事者の家族、遺族として経験したこと、支援者として活動していることなどを一人ひとり紹介。
先天的に障害がある人から「障害そのものの苦しさを感じたことはないが、社会で生きる苦しさを感じている」、難病患者の家族から「昔は今よりも、表立って病気を知られないようにする空気が強かった」など、苦しい経験を伝える発言があった他、当事者の立場から「県庁や県議が動いてこの場に参加していることがうれしい」、「患者会は楽しくないと続かない」、支援者の立場からは「当事者が納得できる支援を受けてもらえるようにすることの大事さを痛感している」などの話もあった。
それぞれが抱える困難を話している場面でも、参加者の声が暗くなることはなく、前向きな話し合いの場となった。
北畑さんは今後、より多くの当事者を交え、食事を共にする企画などもしながら、意見交換会を発展させていくとともに、県内のALS患者会を立ち上げたいとしている。