和歌の浦あしべ庵が完成 「聖地」の魅力発信へ

テープカットを行う尾花市長(中央)、梶間会長(右隣)ら
テープカットを行う尾花市長(中央)、梶間会長(右隣)ら

和歌山市が整備を進めてきた和歌の浦の魅力発信拠点施設「和歌の浦あしべ庵」が同市和歌浦中に完成し、9月30日にオープニングセレモニーと記念イベントが行われた。「和歌の聖地・和歌の浦 誕生千三百年記念大祭」が10月27日に開かれるのを前に、周辺を訪れる人々のにぎわいの中心となる施設が待望のオープンを迎えた。

同施設は、和歌の神様を祭る玉津島神社に隣接する「旧福島嘉六郎邸」を市が購入し、建物の改修とともに庭園の整備を進めてきた。

福島は和歌山綿布の社長を務め、綿織物の生地表面を起毛させた「綿ネル」の染色技術を開発し、美しい色柄と大量生産を実現し、地場産業としての基盤を築いた人物で、旧邸は別荘として1929年(昭和4)に建設された。

長く荒れた状態だったが、名勝和歌の浦クリーンアップ隊による草刈りや樹木の伐採、砂取りなど地元の地道な活動によって復活し、市の整備を経て、数寄屋(すきや)造りの建物と、奠供山(てんぐやま)の荒々しい伽羅岩(きゃらいわ)を生かした庭園が調和する施設としてよみがえった。名称の「あしべ庵」は公募で決定した。

駐車場などを含む施設の総面積は約2680平方㍍で、旧邸の離れを観光拠点とし、観光客らの休憩所、和歌に関するイベントの開催などに活用する。庭園は通路で玉津島神社境内と奠供山山頂へとつながり、1300年前に聖武天皇が行幸し、この地を大切に保全するよう詔(みことのり)を発したと伝わる和歌の浦の景観を、見渡すこともできる。

オープニングセレモニーは近隣の市立明和中学校吹奏楽部の軽やかな演奏でスタート。尾花正啓市長は「和歌の浦を愛し、守ってきてくださった皆さんのおかげで、素晴らしい施設として整備することができた。海外を含めて、多くの人に来て、楽しんでもらいたい」とあいさつし、和歌浦地区連合自治会の梶間敏之会長は「地域にとって喜ばしいことで感激している。生まれ変わったこの場所を、他府県から来た人がもう一度訪れる場所に、私たちが永遠に愛していける場所にしていきたい」と期待を寄せ、丹羽直子市議会議長ら来賓も祝福した。

テープカットでセレモニーが終了すると、NPO法人和歌の浦自然・歴史・文化支援機構が主催するオープン記念イベントが始まり、地元の住民や団体らによる飲食やゲームのブース、キッチンカーなどに来場者の列ができ、ステージは、地元の子どもたちによるダンスや紙芝居、健康体操などで盛り上がった。

あしべ庵の利用時間は午前10時~午後4時。月曜、12月29~31日は休み。問い合わせは市都市再生課(℡073・435・1048)。