市民の力で保全・活用を 松下遺産の学習会
和歌山市出身でパナソニック創業者・松下幸之助の寄付で造られた松下体育館(同市西浜)の価値や魅力について学ぶ会が、このほど同市西高松の和歌山大学松下会館で開かれた。県建築士会和歌山支部事業委員会が主催。会員ら約40人が参加し、「松下遺産」について理解を深めた。
建物の保存・活用について考える機会にしようと開催。松下幸之助に関係する建物として、県内には同体育館の他、会場となった和歌山大学松下会館、和歌山城紅葉渓庭園茶室「紅松庵」、県立紀伊風土記の丘「松下資料館」などがある。
松下体育館は1970年に竣工。県内で第26回国民体育大会(黒潮国体)が開かれるのに合わせて計画された体育館の一つ。
学習会では、幸之助の寄贈建築に関する研究に取り組んだ島本智也さん(28)が講演。幸之助が和歌山に建物を寄贈するときに、スポンサーではなく、設計の選定やデザインなどを提案することが多かったことから、経営方針や思想に合致する設計者、デザインを取り入れ、地元の繁栄を願っていたのではないかなどと話した。
また、和歌山大学システム工学科の平田隆行准教授(53)は、松下体育館の断面図などを紹介しながら、換気口や屋根などの建物の特徴などを説明。
元県都市住宅局長の中西達彦さん(67)は「松下さんの遺志や故郷への思いを感じながら市民の力で松下遺産を残していきましょう」などと伝えた。
参加した和歌山市の小野田真弓さん(59)は「保全していくのは大変だが、取り壊すのは一瞬。和歌山の素晴らしい松下遺産を今後も残していきたい」と話した。