県産100%ワイン目指す 海南に県内初の個人醸造所

ワインを手にする南口さん
ワインを手にする南口さん

和歌山県海南市下津町引尾で、個人では県内初となるワイナリー「紀乃國わいん工房」を営む南口義彦さん(69)。ブドウの栽培からワイン醸造まで手がけており、「数年後は、畑で自家栽培したブドウで県産100%ワインを造る」と意欲を話す。

同工房は、下津町仁義地区の立神社(たてがみしゃ)のすぐ近く。築100年以上の古民家を改装し、醸造所と店舗を併設する。

南口さんは大阪府出身。八尾市で営業職の会社員として長年勤務。40歳半ばになり、「このままでいいのだろうか」と、先の人生を考え漠然と不安を感じたという。

八尾市や近隣の羽曳野市には、ブドウを栽培している光景が多く見られ、南口さんは、ワインが好きだったこともあり「こういう場所で第二の人生を歩みたい」と思い、羽曳野市でブドウ栽培からワイン造りをしている人を知り、「手伝わせてほしい」と懇願し、修行することになった。

会社員とワイン造りの二足のわらじを15年ほど続けたが、中途半端になってはいけないと会社を辞め、ワイン造りに軸を置くことを決意。福井や東京、神戸、和歌山の知人から「一緒にやらないか」と声がある中、大阪に住む両親のこともあり、和歌山を選んだ。

2018年、有田市のワイナリーでブドウ栽培と醸造する責任者として勤務。23年に「自分でやりたい」と独立。24年10月末、現在の場所にワイナリーを開業した。

海南市に決めたきっかけは、立神社だった。ブドウ栽培や醸造する場所を探していたところ、道に迷ってしまい、出た所が立神社で、境内にある高さ約20㍍の特大岩を見て感激した。しばらくして、不動産業者の紹介で訪れた場所が偶然にも現場所で、「呼ばれたな」と運命的なものを感じ、「ここでやる」と即決。

南口さんは、海南市七山地区と有田市宮原地区に計約1・1㌶のブドウ畑を所有。栽培が順調に進めば約10㌧のブドウが収穫でき、約8000本(750㍉)のワインが造れるという。今は、どんな品種が土地に適するかを調べるため、ソーヴィニヨンやシャルドネなど8種類の苗を減農薬で育てている。

栽培は、垣根仕立てと棚仕立てがあり、南口さんの畑の一部はミカン畑だったこともあり、垣根仕立てで育てている。「ここは、近くに海があり、ミネラルを含んだ風が吹く。南仏の気候に似て日当たりも良い。良いワインができるのでは」と期待を寄せる。

南口さんは、ワインの仕事は農業8割、ワイン製造2割だといい「ワインのおいしさはブドウで決まる。ブドウを一生懸命作れば、思いは伝わる」という信念を持ち、ヨーロッパで先人が培ったワイン造りの文化を重んじ、代表的な品種を育て、基本を押さえた上でオリジナルを造る。ブドウの生育には3年ほどかかる。「県産100%かつ自社畑100%のワインを造るのが夢」と話し、「口に入るものなので、責任を持って安心を提供したい。『和歌山産といえば、わいん工房』となるよう、ここへ来たのも何かの縁、ここでやる意義や責任を持ち、貢献できたら」と意気込んでいる。

現在、同工房で醸造した赤、白、ロゼワイン「八百万神」を販売している。和歌山市のワインのでぐち、広川町のスターフィールド、同店で購入できる。750㍉㍑3520円(赤・白)、3300円(ロゼ)。同店を訪れる際は事前に電話(℡090・8823・4024)を。