障害で野球を諦めない ヤマト和歌山

「ついてこられやんからやめとき」――。野球をしたかっただけなのに、幼い頃に心無い言葉をかけられた。しかし、大好きな野球を諦めることができなかった。脳性まひによる左上下肢と体幹の障害がある当時高校2年生の楠木祥瑞(しょうずい)さん(58)=和歌山市=のそんな思いが、県内唯一の身体障害者野球チーム「ヤマト和歌山」を生んだ。メンバーは交流の輪を広げようと、仲間を募っている。
身体障害者野球では、盗塁禁止やバント基本不可などのルールが設けられている。それでも試合は真剣勝負。世界大会、春の選抜、秋の選手権などが開催され、しのぎを削っている。
同チームは1984年に創立。現在のメンバー12人は、「楽しく」をモットーにしながらも勝利を目指し、同市西浜のグラウンドを拠点に、毎週日曜午前9時から正午まで練習に汗を流している。昨年は全国大会にも出場するなど、着実に力をつけてきた。楠木さんは「一般の野球から排除されたことは今でも忘れられない。たとえ車椅子でも、ハンデがあっても、誰でも好きなことで輝ける社会にしたい」と話す。
チームを支える宮本泰希代表(65)が身体障害者野球を知ったのは約10年前。知的障害のある当時高校生の息子・倫樹さん(25)が入部したのがきっかけだ。「車椅子の人が打席に立ち、片腕の人が一塁に送球している」、そんな光景に心を打たれたという。
宮本代表が「チームに入ってから顔つきが変わった」と言う倫樹さんは、今では主将を務め、エースとしてマウンドに立ち、「チームを引っ張れる選手」を目指す。約3年前に入部した築地友哉さん(20)はセカンドを守り、「上手にボールを捕れた時の楽しさがたまらない」という。
宮本代表は「ここは野球がしたくても諦めていた人が野球をできる場所。ただ楽しむことの先に、勝利と成長があって『こんなこともできるんだ』と知れる。ぜひ一緒にプレーを」と呼びかけている。
入部条件は身体障害者手帳保持者であること。入部希望や問い合わせは宮本代表(℡090・6244・3566、skiyasu001a@gmail.com)。
