根来塗の工程見本 池ノ上辰山さんが寄贈

豊臣秀吉の根来攻めで途絶え、中世の幻といわれた「根来寺根来塗」。その技法を根来塗権威者である河田貞氏と共に探求し、復元した池ノ上辰山(しんざん)さんは=和歌山県岩出市=製品を制作する一連の工程を段階的に示した工程見本を初めて制作し、6月26日に市民俗資料館に寄贈した。
朱塗りの漆器「根来塗」は、主に社寺や上流階級の什器や生活用具として鎌倉、室町時代を中心に根来寺の工房で専門の漆器職人たちによって作られてきたといわれている。
その技法は複雑で、木地に漆の下塗りを繰り返し、器の角や縁などの欠けやすい部分に麻布を貼り、さらに漆を何度も塗り重ね、26もの工程を経て完成する。そのうち19工程が下地で、時間と手間を惜しみなく使って制作する根来塗は、沸騰したお湯を注いでも、落としても壊れない強度と、シンプルな造形美が特長。
池ノ上さんは、根来塗の保存・伝承に尽力し国の文化財保護に多大な貢献をしたとして、2019年に文化庁長官表彰を受けている。
今回池ノ上さんが寄贈したのは、根来塗が出来上がっていく様子を10段階に分けた実物。木地に漆を浸透させて強度を高める木固め、麻布を漆で張り、それが見えなくなるまで下地をするなどの工程を紹介している。
湯川佳彦館長は「普段完成した作品しか見る機会はなかったが、手間と時間をかけて出来上がる根来塗の真髄を見て知ってもらえる機会になる」と感謝。
池ノ上さんは「根来塗は、見えないところに時間をかけて作っていることを知ってほしい」と話した。
展示は午前9時から午後5時まで。火曜日休館。入館無料。問い合わせは同館(℡0736・63・1499)。
9月20日からは大阪市立美術館、11月22日から東京のサントリー美術館でも展示される。