干潟のアサリ守る 和歌の浦で天敵を採取

持続可能な海社会の実現を目指すNPO法人わかやま環境ネットワーク(中島敦司代表理事)主催の「わかやま海洋サミットプロジェクト」の3回目が5月30日、和歌山市の和歌の浦干潟の潮干狩り場で開かれ、15家族計42人の参加者らがアサリを食べるツメタガイを採取した。

近畿圏最大級の干潟として知られる同所では、アサリを食べるツメタガイやエイなどの影響でアサリ資源が減少し、10年ほど潮干狩りが開催できていない。

この日、同団体の平井研理事と、NPO法人Blue Ocean for Children(ブルーオーシャンフォーチルドレン)」の桑田和浩副理事の他、ツメタガイ採取のエキスパートとして、和歌浦漁業協同組合の副組合長理事、横田邦雄さんが参加した。

通称「砂茶わん」と呼ばれるツメタガイの卵塊を見せながら、横田さんが「モグラのようなツメタガイの足跡を見つけたら、その先の膨らみを掘ると見つかるはず」と探し方をレクチャー。バケツやスコップなどを手にした参加者らが、家族ごとに協力しながら干潟でツメタガイを採取した。

平井さんでも難しいというツメタガイの採取は、横田理事協力のもと、13個のツメタガイや、30個の卵塊を手にした家族もおり、ツメタガイ以外にも魚やカニ、エビなどさまざまな干潟の生き物に触れた。参加した仲井丈詞(じょうじ)君(7)は「貝によって全然違うヤドカリを捕まえるのが楽しかった」と笑顔で話していた。

横田さんは2014年から、毎年1回ツメタガイの採取を続けているといい、「最初の頃は一日に2000個ぐらい採取できたが、最近では100個も採れないほど少なくなってきた」と話し、「海外のアサリをまいて潮干狩りをする方法もあるけれど、国産のアサリを食べてもらえるよう、頑張って増殖しているので、今後も活動を続けてアサリが増えていけば」と願う。

採取後、平井さんは子どもたちに「ツメタガイは悪者か?」といった質問を投げ掛け、「悪者」と即答する声に対して、「ツメタガイは悪いことをしようと思ってアサリを食べているのではなく、生きるために食べているだけ」と説明。「アサリを増やすためにツメタガイを減らすことは人間の都合であり、決してツメタガイが悪者という訳ではないことを頭の片隅に置いておいてほしい」と伝え、子どもだけでなく、参加した大人にとっても、生物と人間の関わりについて考える機会となった。

 

ツメタガイの探し方を教える横田さん㊨