家庭のぬくもり子どもに 県里親会の富松さん

「里親になるには責任が重過ぎる」、「里親になるのは大変」――。これが多くの人が“里親”に抱くイメージではないだろうか。10月は国が進める里親月間だ。国は2016年の児童福祉法の改正を受けて、里親委託を推進。里親委託率を、29年度末までに、年齢別・段階的に50%~75%まで引き上げる目標を掲げている。里親とはどういったものなのか。里親暦約20年、今まで、10人の子どもたちを預かってきた和歌山県里親会の富松伸六さん(57)に話を聞いた。

県では「社会的養育推進計画」を策定。里親制度を推進し、29年度までに、里親登録270世帯、委託率44・1%(108世帯)を目標にしている。現在、県内では、里親登録家庭は165世帯で、増加傾向にある。

共に成長する喜び

里親制度は、さまざまな事情で親と一緒に暮らすことができない子どもたちを一定期間家庭に迎え入れ、共に生活し養育するもの。

富松さんが里親になったのは、今から約20年前。夫婦ともに里親家庭で、実の兄弟、姉妹以外がいるのが当たり前の生活の中で育った。富松さんの家庭では現在、けん君(8)とりゅう君(16)の2人の子どもを迎えているが、今まで、他にも8人の子を受け入れてきたという。

多くの子どもを受け入れてきた理由を富松さんは「夫婦ともに子どもが好きというのが大きいですね。育てているのが、実は私たちが成長させられていることが多いんですよね」と、共に成長する喜びがあると話す。自立した子が再び、富松さんを求めて家に戻ってくることもあるという。彼らにとって、〝居場所〟となっていることに、里親のやりがいを感じているそうだ。

里親の種類は養育里親、専門里親、養子縁組里親、親族里親があり、里親になるためには、研修などを受ける必要がある。また、子どもの生活費、学校教育費や里親手当などが公費で支給される。実際に里親になるまでに、面会や交流があり、児童相談所などによるサポートもある。

家庭の事情さまざま

けん君、りゅう君、2人とも、それぞれ家庭の事情を抱えており、けん君は3歳、りゅう君は2歳の時に、富松さんのもとに来た。

2018年の厚生労働省の発表によると、虐待や親の病気、経済的な問題など、さまざまな事情で社会的養護が必要な子どもの数は全国で約4万5000人に上る。

りゅう君は、富松さんのもとへ来て以来、母親と会えていない。けん君は月に1回、母親が面談に来るという。「事情があって、育てられないけれど、子どもはかわいいからって。子どもも「きょうはママが来る日やって」と楽しみにしています。それが彼にとったら、普通なんです」と富松さん。

富松さん夫婦のことも自然にパパ、ママと呼ぶけん君。富松さんには実子が4人おり、特に一番下の子は、けん君、りゅう君と過ごす時間も長く、本当の兄弟のように育ったという。友達に複雑な環境を説明することに負担を感じることもあったが、一緒に過ごす時間を「とても楽しかった」と振り返って話していたそうだ。現在、富松さんのもとにはけん君、りゅう君と次男がおり、「今後も機会があれば子どもを受け入れる」と富松さんは話す。

育て直しの必要も

一方、富松さんは里親の厳しさを「食事の仕方やあいさつの仕方など、教えてもらってないことも多く、『この年齢ならこれぐらいできているだろう』が、通じないこともある。分からないことは、怒らず、丁寧に教えていくことが大切。育て直しが求められることもあります」と口にする。

現在、富松さんが会長を務める県里親会では、里親の負担を少しでも軽減させるために、定期的に交流会を行い、悩み相談を行っている。富松さんは「里親を支えるサポートもありますので、気軽に相談会に来てもらえれば」と話している。

問い合わせなどは里親支援センターなでしこ内県里親会(℡0736・69・1004)。

富松伸六さん

富松伸六さん