甘柿の「紀州あかね」 県が新品種を開発

日本一の柿産地に新たなブランド――。和歌山県は26日、県果樹試験場かき・もも研究所(紀の川市粉河)が甘柿の新品種「紀州あかね」を開発したと発表した。シャキシャキとした食感と味に優れ、県産の主力品種の出荷量が少なくなる時期に収穫できることも大きな特長。現在は品種登録出願中で、2022年冬以降、苗木の流通を図り、25年秋の収穫開始を見込んでいる。

県産柿の収穫量は1979年から42年連続で全国1位を記録し、20年産の収穫量は4万500㌧、全国シェアの21%を占めている。

県の主力品種の出荷は、9月中旬から10月上旬にかけて渋柿「刀根早生(とねわせ)」、10月中旬から下旬ごろが渋柿「平核無(ひらたねなし)」で、11月中旬ごろから甘柿の「富有(ふゆう)」へと移り、渋柿から甘柿への切り替わり時期は出荷量が減少する課題があった。

新品種の「紀州あかね」は、富有より早い10月中旬から下旬に収穫が可能で、脱渋が不要な完全甘柿。果皮は紅橙色、1個の実の重さは250~300㌘程度、糖度は富有と同等かやや高い17%前後の豊かな甘みがありながら、シャキシャキと心地良い食感で爽やかな食味となっている。

開発が始まったのは08年。収穫期が早く、緻密でやわらかな果肉などが特長の「早秋(そうしゅう)」と、収穫期は遅く、果実が大きくてサクサクとした食味に優れる「太秋(たいしゅう)」を交配させ、特性の調査や選抜作業を11~20年にかけて進めた。

実がなる雌花しか咲かない富有などに対し、「紀州あかね」には実にならない雄花も咲き、収量がやや少ないなどの短所もあるが、同研究所の古田貴裕主査研究員は「生産者に受け入れてもらえるか、現場に出して意見を聞いたところ、栽培技術で対応できるということになった」と、実の品質の良さなどの長所が農家に好評だったことを話す。

県が開発したオリジナル品種としては、同じ交配から生まれたきょうだいに当たる「紀州てまり」に続いて2番目。ことし5月に農林水産省への品種登録出願を行い、23年の登録を見込んでいる。現在は苗木業者への働き掛けを進めており、来年冬から農家に苗木を流通させる。

県農林水産総務課研究推進室の塩路宏明室長は「甘柿で早く収穫できる品種を出したかった。紀州あかねは(渋柿の)平核無の時期から投入できる」と期待している。

実際の収穫開始は25年秋以降の見込みだが、仁坂吉伸知事は26日の定例記者会見で、「楽しみに何年か待ってもいいというくらいのおいしさ」と太鼓判を押した。

甘柿の新品種「紀州あかね」を手に古田主査研究員

甘柿の新品種「紀州あかね」を手に古田主査研究員