有田みかんベトナムへ 日本産輸出の第1号

日本産温州ミカンのベトナムへの輸出が解禁されたことを受け、日本からの輸出第1号として、和歌山が誇るブランド「有田みかん」が28日に初出荷されることが決まった。連携して輸出に取り組む県とJAグループ和歌山、日本貿易振興機構(ジェトロ)和歌山貿易情報センターの3者は11日、県庁で共同記者会見を開き、「ベトナムを有望なマーケットとして確立したい」と意気込みを話した。

県は2017年から、国産温州ミカンの輸出に向け、ベトナムとの検疫条件の早期合意を政府に提案。昨年10月には菅義偉首相(当時)が同国のフック首相(現国家主席)との首脳会談で輸出解禁の加速化に言及し、ことし10月1日の解禁につながった。

輸出条件は、登録生産園地で栽培されること、ミカンバエが発生していないことなど5項目。ベトナム当局は、同国にいないミカンバエの持ち込みを注視しているとみられるが、県内でこれまで、ミカンバエの発生は確認されていない。

県はミカンの収穫量、出荷量とも20年産まで17年連続で全国1位を記録。20年産の出荷量15万1000㌧に対し、海外への輸出量は香港、シンガポール、マレーシアなどに計218・5㌧と少量だが、販売単価は日本国内より高く、生産者の所得向上に向け、海外販路拡大への期待は高まっている。

今回ベトナムに輸出する21年産ミカンの登録園地は、JAありだ管内の有田川町と広川町の12カ所、計213㌃で、輸出量は約2㌧を見込んでいる。

JA県農の楠本健次理事長は、これまでの輸出には国内市場の需要調整の側面があったとするが、今後は輸出販路を積極的に拡大し、「少しでも多くの皆さんにおいしい有田みかんを味わってもらいたい」と力を込める。

ベトナムでもミカンは生産され、オーストラリアなどから輸入もあるものの、県の岩本和也農林水産部長は県産ミカンについて「種がなく食べやすく、甘さと酸味のバランスなどで競争力があると思っている」と話す。

初出荷の28日には、JAありだの選果場(有田川町)で、駐日ベトナム大使らを迎えて出発式を行う予定。12月上旬からホーチミン市を中心に高級スーパーなどで販売する。

ジェトロが現地でのPRに取り組み、ベトナム語による温州ミカンの紹介動画を作成した他、SNSや現地のインフルエンサーを活用した情報発信も行う。ジェトロ和歌山の後藤崇所長は、ハノイとホーチミンに事務所を置くジェトロのネットワークを生かし、プロモーションの準備を進めていることを紹介した。

今後の輸出量拡大は、ベトナムでの販売状況を見極めての判断となるが、JAありだの森田耕司組合長は「グローバル化を進め、世界中で有田みかんが日本産ミカンのリーダーとして認知されるために、支援をお願いしたい」と将来を見据えている。

ベトナムへの輸出が始まる「有田みかん」を囲んで笑顔の(左から)楠本理事長、森田組合長、後藤所長、岩本部長

ベトナムへの輸出が始まる「有田みかん」を囲んで笑顔の(左から)楠本理事長、森田組合長、後藤所長、岩本部長