宮下さん、速玉大社祭事保存会に 文科相表彰

芸術・文化の振興や文化財の保護などに尽力した個人、団体に贈られる2021年度地域文化功労者文部科学大臣表彰に、和歌山県内から、ピアニストの宮下直子さん(和歌山市)と、熊野速玉大社祭事保存会(新宮市)が選ばれた。表彰式は京都市内で行われた。

聴衆を魅了する演奏 音楽祭プロデュース

宮下さんは大阪府枚方市生まれ、和歌山市育ちで、第25回全日本学生音楽コンクール西日本大会ピアノ部門小学校の部優勝、第30回同コンクール高校の部2位など早くから才能を発揮した。

県立桐蔭高校から東京藝術大学音楽学部ピアノ専攻に進学し、在学中に「安宅賞」を受賞。卒業後はロンドンでマリア・クルチョ女史に師事し、欧州各地のコンサートやコンクールへの積極的な出演で高い評価を得ており、留学中の1985年には、天皇陛下(当時は浩宮さま)臨席の英国オックスフォード大学ジャパニーズ・ソサエティ企画によるコンサートに招かれ、称賛をもって迎えられた。

88年、5年間の留学を終えて帰国した後は、和歌山、東京、大阪でソロデビューリサイタルを開催。その後は全国各地での演奏活動に取り組み、リサイタル、オーケストラとの共演、和歌山での独自企画によるコンサートシリーズの展開など、現在まで多様な活動で多くの聴衆を魅了し続けている。

演奏活動に加え、相愛大学音楽学部、京都市立芸術大学音楽学部などでの指導、県新人演奏会選考委員を務めるなど、後進の育成にも精力的に取り組んでいる。

さらに、子どもたちが演奏にふれ、表現することで未来の和歌山を創造することを目指した音楽の祭典「きのくに音楽祭」では、初回の2019年度からプロデューサーを務めるなど、県の音楽文化振興に多大な貢献をしている。

速玉祭・御燈祭り 伝統の継承と発信

熊野速玉大社祭事保存会は、同大社を中心とする大規模な祭礼で全国的にも知られる「新宮の速玉祭・御燈祭り」を保持している団体。

速玉祭は毎年10月15日に行われ、神馬の渡御があり、神霊を神馬に頂き、速玉大社や御旅所などを巡る。翌16日にはみこしの渡御と御船祭りがある。「一つもの」と呼ぶ人形を乗せた神馬を先頭に、みこしが町内を巡った後、神霊はみこしから船にうつされ、川を上って御船島へと向かう。島では小船による早舟競漕が行われ、その後、神霊は陸に上がって御旅所に入り、儀式を執り行う。

御燈祭りは毎年2月6日、神倉山の山上に「上がり子」と呼ばれる参拝者が群集する中、御神火が起こされ、火は大たいまつに移される。いったん下山し、再び上ってきた大たいまつから人々は火を分かち、山門が開かれると、上がり子たちは一気に山を駆け下りる。翌日は御礼参りの日で、神倉山のふもとで護摩や火渡り、餅まきなどが行われる。

同保存会は、周辺地域の氏子や関係団体と協力して長年にわたり祭礼を執行、運営し、伝統文化の継承と地域の活性化に尽力。熊野の世界遺産を生かした観光や魅力発信など地域振興にも重要な役割を果たしている。

宮下さん(県提供)

宮下さん(県提供)