夢舞台で感謝とエール 市和歌山アルプス

9回表に1点差に追いつかれ、固唾(かたず)をのんで見守っていた市和歌山アルプススタンドは、勝利が決まった瞬間「やった!」「勝った」と大歓声に包まれた。アルプスでは吹奏楽部の生演奏による7曲メドレーに合わせてバトン部が声援を送り、勝利を後押しした。

2年連続出場の市和歌山だが、昨年は新型コロナの影響でアルプスでの生演奏が禁止され、録音音源が使用された。

市和歌山の吹奏楽部は新3年9人、新2年が5人の合わせて14人が所属。全部員が公の場で演奏した経験がなく、今回のセンバツが初演奏となった。

原せきな部長は、甲子園で演奏するのが夢で市和歌山に入学したといい、「夢をかなえてくれた野球部に感謝の思いを込めて、背中を押せるような演奏を届けたい」と笑顔。岩井誠悟顧問(29)も、「全国の前で恥ずかしい演奏はできない」と、これまで練習を重ねながら、コロナ禍で披露する機会のなかったその成果を存分に発揮した。

この日、同校吹奏楽部以外に、向陽高校の1年3人、2年24人の合わせて27人が〝友情″応援に駆け付けた。事前の合同練習が禁止されたため、今回はぶっつけ本番で演奏に挑むことになった。向陽高吹奏楽部の古居美咲希部長は、「屋外での演奏は貴重な経験。私も和歌山の代表としてしっかり応援したい」と意気込んでいた。

バトン部は新3年5人、新2年9人の計14人がアルプスでパフォーマンス。増田梨乃(りんの)部長は「去年来た時もそうでしたが、アルプスに入ったときに目の前に広がる光景は圧倒される」と感激。バトン部に入りたいと思ったきっかけは、中学2年生の時、テレビで市和歌山バトン部のパフォーマンスを見たこと。「私もいつかあの場所で踊りたい」と思いを募らせてきた。センバツ出場が決まった時は、涙が出るほどうれしかったという。

バトン部の高岡真大(まひろ)副部長は「甲子園に連れて来てもらったお返しができるよう、野球部に負けないような踊りを見せたい」と全力。注目度の高い相手校の花巻東に圧倒されないよう、マスクをしていても明るい気持ちだけは忘れずに応援しようと鼓舞してきた。

「最後はハラハラしましたが、またここで応援できる。次も全力の笑顔で野球部を応援します」  夢の甲子園で絶好の機会をくれた野球部への恩返しの演奏、パフォーマンスは2回戦へと続くことになった。

 

選手たちにエールを送るバトン部のメンバー