歴史が古く用途も異なる「かぼす」
前号では、疲労回復や肥満予防に効果があり、徳島県で盛んに栽培されている「すだち」を取り上げた。すだちと見た目が似た柑橘(かんきつ)がある。今週は「かぼす」を紹介したい。
かぼすは直径6㌢程度、重さが100~150㌘程度で、すだち(直径4㌢程度、重さ30~40㌘程度)と比べるとサイズが大きい。また果実の頭の部分が盛り上がり、外皮にも張りがあることで見分けることができる。
収穫時期は露地物が8月ごろから11月ごろ、ハウス物が3月ごろから7月ごろまで出回ることから、年間を通して手に入れることができる。まろやかな酸味が特徴で、鍋料理やお吸い物によく合う。焼き魚などに添えるすだちとは少し用途が異なるといえる。
かぼすの歴史は古く、300年程前に中国大陸から日本に伝わったとされる。元禄(1688―1704年)の頃に京都の医師が大分へ苗を持ち帰ったことから大分県で栽培が盛んになったという。農水省統計(2018年)によると、大分県での生産量は全国シェアの98・5%。他にも宮崎、福岡、埼玉、群馬などで生産されており、和歌山県ではわずか。
名前の由来は、刻んだ皮を使い、蚊を追いやる(いぶす)ために使われ、蚊をいぶすことを意味する「蚊いぶし」が徐々に変化し「かぼす」と呼ばれるようになったという。当時は薬剤としての用途があったことがうかがえる。
果実にカリウムやビタミンC、クエン酸が豊富に含まれることから、疲労回復や風邪予防、美肌効果が期待できる他、ポリフェノールの一種であるフラボノイドが、抗酸化作用や抗がん作用として期待されている。
すだちと見た目は似ているが用途や歴史が異なるかぼす。和歌山県産は珍しいので見つけたらぜひ購入してみてほしい。
(次田尚弘/和歌山市)