漆の原産地特定へ 岩出の植林地で漆採取

元素を測定することで漆器に使われる漆の原産地を推定する研究に生かそうと、国立研究開発法人海洋研究開発機構の若木重行副主任研究員が8日、根来山げんきの森(和歌山県岩出市根来)の植林地で漆の木から樹脂を含む漆の樹液を採取した。

この研究は、地質調査を進める京都大学白眉センターで考古学を研究する大谷育恵特定助教と共同で進めているもので、漆器の産地を探る大きな手掛かりになると期待が高まっている。

この日は若木研究員と共に根来塗宗家の池ノ上辰山さんが漆の木から樹液を採取。漆の木は、池ノ上さんが15年前に植林したもので、現在では8本の漆の木から漆を採取できるまでになったという。

池ノ上さんがまず皮はぎ鎌で表面の皮を削り、漆かきカンナで木に傷をつけた後、若木研究員がにじみ出てきた樹液をすくい取った。

約1㍉㍑の樹液の他、漆の葉や樹皮、現地の土壌や川の水をサンプルとして採取した。

若木研究員は、「今回はストロンチウムという元素の同位体を調べることで、人の指紋のように漆の原産地を明らかにすることが任務の目的。重要なサンプルを持ち帰ることができる」と話した。

採取に協力した池ノ上さんは、「昔の遺品が根来の地で作られたのか分からないものが多いので、原産地の解明につながってほしい」と期待を寄せた。

漆を採取する若木研究員

漆を採取する若木研究員