給食にロイヤル熊野牛 卸会社が宮小へ贈る
50年以上にわたり食肉卸業を営む㈱伊勢屋(和歌山市鳴神)は8月30日、県内で丹精込めて育てられた熊野牛を地域の子どもたちにも食べてもらおうと、同市秋月の宮小学校(田中いずみ校長)に自社ブランドの「ロイヤル熊野牛」50㌔を贈った。この日、同小学校では約1年ぶりに給食に牛肉が登場。児童、教職員合わせて約700人がぜいたくな熊野牛の焼き肉を笑顔で味わった。
同社専務の前田健太郎さん(33)は、同校の卒業生である同社代表取締役を務める父親の秀樹さんと「何か社会貢献できることを」と考えていた時に「近年の食材の価格高騰などを受け、児童らが給食で牛肉を食べられていない」という現状を知り、同校への寄贈を決めた。
この日の朝、前田さん自らが冷凍車を運転して同校に届けたロイヤル熊野牛は「野菜と共に肉のおいしさを味わえるように」とメニューを焼き肉に決め、調理。3年2組の教室では、前田さんが給食を心待ちにする児童らを前に「県内でおよそ2年半かけて育てられた牛さんの命を頂きます。命の大切さを感じながら味わって食べてください」と呼び掛けた。
児童らは「牛のお肉は何種類ありますか」などと質問をして知識を深め、給食にロイヤル熊野牛の焼き肉が登場すると、匂いをかぐなどし、おいしそうに味わった。
本田結菜(ゆな)さん(8)は「ジュワーっておいしい」とにっこり。重田瑛都さん(9)は「いつもの肉と違って味が濃い。めちゃくちゃおいしい」と喜んでいた。
前田さんは「子どもの時に熊野牛を食べておいしかったなと思ってもらえれば、大人になっても食べてくれるはず」と期待。熊野牛を販売している所はまだまだ少ないといい、「より多くの人に知ってもらいたい」と話した。
物価高騰で市が補助 給食費1食20円増額
同市の学校給食費は2015年4月に改定して以降、値上げをせずに提供されている。同校の栄養教諭、吉永文恵さんによると、同校をはじめ、市内のほぼ全ての小学校の給食費は、現在1食あたり275円(うち23円は市が補助)。食材だけでなく、サラダ油やガス代などの高騰を受け、市はこれまでの3円に加えて本年度はさらに20円の補助を決めた。
吉永さんは「何とかやりくりしてメニューを決めているが、必要な栄養を取れていないのが現状」と話す。同校で牛肉が提供されたのは、昨年9月に市からの提供で食べた熊野牛以来、約1年ぶり。田中校長と共に「ありがたいのひと言。感謝しかない」と高級食材の提供を喜んだ。
市教委は9月1日、「学校給食食材の物価高騰にかかる給食費支援金の申請について」の知らせを保護者に配布。現在の学校給食費の金額では子どもたちに栄養価を満たした給食の提供が困難な状況とした上で、今後給食費の値上げの必要性についてもふれ、本年度については国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、市給食費支援金で補填(ほてん)すると説明した。