西日本では珍しい「なつっこ」

前号では、100年以上の歴史を持ち、さまざまな桃の親品種として親しまれる「白桃」を取り上げた。今週は白桃の孫にあたる品種「なつっこ」を紹介したい。
なつっこは昭和62年(1987年)に長野県の果樹試験場で「川中島白桃」と「あかつき」を掛け合わせて育成された桃で、平成12年(2000年)に品種登録された。果実の重さは300~350㌘と大きく、他の品種と比べ果皮の産毛が多くて赤みが強く、縫合線が浅いのが特徴。
食してみると、甘味が強めで酸味が少なく、なめらかな口当たり。味、食感ともに、親品種である川中島白桃とあかつきに似たところがあり、人気のある品種の掛け合わせにより、バランスが取れた味わいが楽しめる。水分が多く、ビタミンC、食物繊維、カリウムなどが豊富に含まれるとされ、暑い季節の栄養補給にも適している。
比較的日持ちがする品種であるが、やわらかくなった場合はジャムに加工されることや、ジューサーにかけてピューレとして、また冷凍しシャーベットやスムージーとして食する方法がある。いずれも、甘味が強く感じられ、苦みや渋みがない品種ならではの加工品で、その旨味を余すことなく活用することができる。
農水省の統計によると、栽培面積の第1位は山梨県(230㌶)、第2位が長野県(86㌶)、第3位が新潟県(21㌶)、第4位が和歌山県(18㌶)、第5位が岐阜県(3㌶)となっており、東日本での栽培が盛ん。なかでも山梨県は全体の約63%のシェアがあり、地域特有の品種となっている。
旬は8月上旬から下旬にかけて。西日本では珍しい品種だが、県内で栽培され出回る品種。ことしの旬は過ぎているが、人気品種の掛け合わせからできたバランスの取れた味わいをぜひ楽しんでみてほしい。(次田尚弘/和歌山市)