79歳ジャズドラマー 瀧益生さんコンサート
和歌山市のジャズドラマー、瀧益生さん(79)らによるビッグバンドのコンサートが10月9日午後6時から、同市七番丁の和歌山城ホール小ホールで開かれる。2019年以来のステージ。この3年間で大病を患った瀧さんは「僕が生きてこられたのは、音楽があったから。腕は落ちてるかもしれやんけど、意欲だけは衰えない。『この年齢になっても、これだけできる』そんなメッセージを伝えたい」と話している。
大阪出身。父はバンドマン、母は歌手という家庭で育った。ベニー・グッドマン楽団が演奏する「シング・シング・シング」に心躍らせ、映画『嵐を呼ぶ男』でドラムをたたく石原裕次郎に憧れた。14歳でドラムを始め、17歳でプロデビュー。1969年には、榎谷おさむとシャイアン・エコーズの一員として、東芝レコードから和歌山弁を題材にしたコミカルな「アカナイショ」を発売した。
和歌山市へはキャンペーンで訪問。活気に満ちたぶらくり丁や和歌浦に刺激を受け、その後、和歌山に移り住んだ。世界リゾート博を前に「瀧益生&グッドマン」を結成。和歌山ジャズフェスティバル、和歌の浦スチューデントジャズを企画するなど、音楽でまちを盛り上げてきた。
現在も大阪に現存するキャバレー「ミス大阪」からスタートし、音楽と共に歩んだ半生は、時代に恵まれていたとしみじみ思う。とりわけ、今も通うぶらくり丁には並々ならぬ愛着があり、人であふれ返る商店街の様子は鮮明な記憶として残っている。
3年前に大腸がん、昨年12月には食道がんが見つかった。手術をし、日常生活を送る中で周囲からコンサートを望む声が多く、久しぶりにスティックを握る決意をした。
ドラムには音楽的なセンスだけでなく、体力も求められる。足腰が弱ってきたものの「僕には音楽しかない。生かしてもらっている間は、精いっぱいやりたい」と奮起。家族や友人、主治医ら、支えてくれている周囲への感謝を込めて演奏するつもりでいる。
演奏では何より「お客さんが楽しめる空間をつくること」を大切にしてきた。楽しそうにしている客の反応を見るのがうれしいといい「ジャズは大衆音楽。演奏を聴きながら、あの映画見たな、この曲でダンスしたな、と懐かしく思い出してもらえたら」とほほ笑む。
コンサートではアルトサックス奏者の足立衛さんを迎え、和歌山JAZZオーケストラが出演。演奏するのは誰もが知る名曲ばかりで「レッツダンス」「A列車で行こう」「ムーンライトセレナーデ」「昔はよかったね」など。フリーアナウンサーの小林睦郎さん司会のもと、過ぎた時代を懐かしみながら紹介する。
瀧さんにとって、元気な響きのある「アカナイショ」は、いつしか「頑張らなあかん」と自分を言い聞かせ、奮い立たせてくれるような言葉になったという。ほれ込んだこのまちや人に、感謝を込めてエールを届けたいと願っている。
チケットは4000円。問い合わせは瀧音楽グループ(℡073・474・2569)。