障害児支援の課題共有を サードプレイスが活動
障害のある子どもと家族が健やかに過ごせる社会に向け、誰も排除しないインクルーシブ(包括的)な育児環境の整備を進めようと、和歌山市のNPO法人サードプレイス(中西美穂代表)が活動している。当事者と支援者の交流会を企画し、双方が抱える具体的な悩み、課題を共有し、解決への一歩を探る地道な取り組みが続いている。
サードプレイスは、障害児育児に孤独を感じている親の悩みを共に考える場として発足し、昨年8月にNPO法人となった。配慮が必要な子どもの福祉増進に向け、障害児を持つ親のオンラインコミュニティーサイトを運営し、交流会や悩みの相談、専門家を招いての勉強会などに取り組んでいる。
当事者と支援者の交流会は、県男女共同参画センター〝りぃぶる〟の提案公募事業の採択を受け、今月18日にオンラインで初開催した。
日本大学教授、内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員の末冨芳さんが基調講演。「全ての子どもの権利を支える」ことが子どもに関する政策の基本であり、そのために、配慮を必要とする障害児には特に手厚くすることが求められると述べた。
さらに、国や社会で子どもを支える観点から、子どもに関する給付金などに「所得制限はあってはならない」とし、障害の有無に関係なく子どもが当たり前に育っていける「インクルーシブ教育」が重要と話した。
講演に続く交流会では、「就園・就学」をテーマに、障害児を育てる保護者、支援を担当する自治体職員ら約20人が意見を述べ合った。
当事者から真っ先に上がったのは、「切れ目のない支援といいながら、切れまくる」との指摘。就園・就学などの区切りのたび、自治体の各担当部署などに対し、保護者が子どもの状況を一から何度も説明する負担を強いられるとの声の他、いわゆる〝転勤族〟の家族からは、転居のたびに支援が一度途切れ、自治体によって制度が異なるものでは福祉サービスが継続されない場合もあることなど、多様な悩みの訴えが相次いだ。
自治体職員からは、当事者たちが日々の生活で多様なストレスや疲労を抱え、状況を説明することにも大きな負担を感じていることを知っているだけに、区切りで新たに窓口を訪れる保護者に対し「どこまで突っ込んで話を聞いていいものか」と悩む思いがあるとの声があり、負担を軽減するシステムや新たな工夫の必要性が浮き彫りになった。
就園に関しては、子どもの受け入れが可能かどうかを、保護者が1件1件問い合わせなければいけない現状への疑問の意見もあった。
保護者の一人は、「問い合わせても、やんわり断られることの連続。ただでさえ心をえぐられるようなやり取りを何度もしなければならない」と話し、各園の情報を把握している行政が関わり、保護者の負担を軽減することを求めた。
中西代表は、支援の要望が「制度がない」との理由で退けられることの多さを指摘。「これからどうしていくかという会話が生まれない。現状のルールに合わない場合、どうしたらいいのかと思う」と話し、課題を共有して解決策を探っていく重要性を訴えた。
交流会は、2月15日午前9時半から、和歌山市三沢町の中央コミュニティセンターで第2回を開催予定。北海道大学准教授で日本ケアラー連盟理事の松澤明美さんが基調講演(録画)し、「福祉サービス」をテーマに交流会となる。
申し込み、問い合わせは中西代表(メールhello@thirdplace-npo.com、℡080・2022・7230)。